「いま世界で最も孤立していながら、最も仲が良い2つの大国は?」
こう問われれば、大半の人が迷わず中国とロシアを挙げるに違いない。欧米諸国はウクライナ上空でマレーシア旅客機が撃墜された事件で、ロシアに厳しい追加制裁措置を決定した。一方の中国は南シナ海の島嶼の領有権をめぐって、ベトナムやフィリピンと対立、米国や周辺諸国との関係が悪化している。また、中国は日本との間でも沖縄県尖閣諸島や歴史認識問題で2年以上も「政冷経冷」状態が続いている。
中露両国は国際的な逆風を跳ね返そうとするように、協力関係を強化しているように映る。習近平国家主席とプーチン大統領の2人はすでに8回もの首脳会談を行なってきた。 習氏とオバマ米大統領との米中首脳会談がまだ2回しか開催されておらず、安倍晋三首相にいたってはゼロであるのと比べると、中露関係の親密さは際立っている。
「現在の両国関係は『全天候性のオールラウンドな戦略的互恵関係』といえる。このような良好な関係が構築できたのは、習近平主席のプーチン大統領に対する思い入れの深さなくしては成り立たない」と北京の外交筋は指摘する。
習氏のプーチン好きは有名だ。習氏の政策を吟味してみると、プーチン氏の政治的な言動に範をとっていることがよく分かる。
その一つは、習氏が口癖のように繰り返す「中国の夢」。プーチン氏は常々「大ロシア主義」への回帰を意識するような発言を行なっており、「ロシアンドリーム」と表現されている。プーチン氏自身は否定しているが、彼が2000年に大統領に当選した際の発言をみれば、かつてのソ連邦の復活を意識しているのは一目瞭然だ。つまり「中国の夢」は「ロシアンドリーム」の模倣といえる。
これに関連するが、習氏は党総書記に就任して以来、領土問題では一切妥協をしないことを意味する「核心的利益」という言葉を繰り返している。これは尖閣諸島問題でもあり、南シナ海の島嶼の領有問題でもある。
プーチン氏も、かつてソ連邦を構成していた共和国をロシアの影響下に置こうとしている。そこで起こったのがクリミア併合であり、ウクライナ問題だ。習氏が中国の周辺地域を自国の統制下に置こうという思惑は、やはりプーチン氏の考えに近い。
文■ウィリー・ラム
(翻訳・構成:相馬勝)
※SAPIO2014年10月号