8月20日、厚生労働省の社会保障審議会年金部会が東京・南青山にある「農水省共済組合南青山会館」の会議室で開かれた。同部会が開かれたのは、5年に1度年金財政を点検する「財政検証」が発表された直後の6月下旬以来、約2か月ぶりのこと。
財政検証で打ち出された「受給額をもっと減らさなければ年金制度は維持できない」というシナリオに基づき、いよいよ本格的に「年金大改悪法案」作りに着手したわけである。
『週刊ポスト』7月11日号<年金「納付率をごまかせ」厚労省内部指示文書をスッパ抜く>でスクープしたように、本当の国民年金未納率は約6割にも上り、保険料未払いは国民年金制度を根本から揺るがせている。
実は、厚生年金も同様の問題を抱えている。
昨秋、田村憲久厚労相は「厚生年金の加入要件を満たしているのに、350万~400万人が未加入」と発表。未払い保険料は総額で年間約2.4兆円にも上るという。
株式会社や有限会社、医療法人などのすべての「法人」や従業員が5人以上の事業所は、厚生年金への加入を義務づけられている。
「厚生年金に加入すると会社側は従業員が支払うのと同額の保険料を負担しなければならない。それを嫌がり、違反を承知で加入逃れをしている会社が多い」(年金博士の北村庄吾氏)
解決策は簡単だ。会社員の税金は国税庁が会社を通じてほぼ100%徴収している。例えば税とともに徴収を一本化する「歳入庁」を創設すれば未払いは一気に解決する。
それができない理由は、税徴収は財務省、年金保険料徴収は厚労省の管轄という官僚の縄張り意識にある。国民の都合よりも、役人の利権が優先されているのだ。
※週刊ポスト2014年9月19・26日号