国際情報

日韓の慰安婦問題 女性の人権問題とは元々別文脈の話だった

 従軍慰安婦問題は、別の目的を達成したい団体などの思惑が交差したことによって基本的な構図から外れてしまった。混乱と逸脱には、朝日新聞による虚偽の記事も大きな影響を及ぼした。元朝日新聞ソウル特派員のジャーナリスト・前川惠司氏は、解決へ向けて、朝日新聞がどのように責任をとってゆくのか読者は注視していると指摘している。

 * * *
 1965年、無償・有償合わせて5億ドルで「完全かつ最終的に」終わった植民地支配への清算とともに、日韓は国交正常化した。従軍慰安婦問題は、その土台を守りつつ、どう知恵を出し、従軍慰安婦だったと名乗り出た韓国人のおばあさんに日本が報いるかという問題ではなかったか。

 それが「日本の戦後加害責任」などという、分かったようでよく分からない言葉で日本を糾弾する支援団体やそれを受けた韓国側などの思惑が交差し、紛糾し続けているというのが、基本的な構図ではあるまいか。

 8月5日の朝日新聞一面、「慰安婦問題の本質直視を」で書かれている、

〈慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたこと〉

 は、いまでは日本において、誰も異議を唱えない普遍的認識ではあるが、この問題が提起された当初の基本的な視点ではなかった気がする。

 そうした「女性としての尊厳」を問題とした視点であるならば、日韓だけでなく、少なくとも第二次世界大戦の参戦国が一同に考えなければならないものとして報道しなければならなかった。どの国の軍も大なり小なり女性に対してひどいことをしたことは、歴史的事実だ。たくさんの日本女性が戦時暴力の被害にあったことは、ソ連占領下の満州や朝鮮半島での出来事として、よく知られている事柄だ。

 当初の視点を崩していくことは、問題を紛糾させるだけではないかと危惧してしまう。解決への道筋は、日韓という東アジアでの日本外交の基軸関係の一つを壊さないためにどうするかでしかない。女性の人権問題としての論議は別の文脈の話ではないだろうか。
 
 いくつかの重大な手抜かりが、日韓世論の対立を先鋭化させるなどの問題を引き起こした。そのことについてきちんと責任をとるべきだろうという主張には一理がある。朝日新聞は、どのようにして責任をとるかを、読者は注視しているに違いない。

※SAPIO2014年10月号

関連キーワード

トピックス

広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
広末涼子、「勾留が長引く」可能性 取り調べ中に興奮状態で「自傷ほのめかす発言があった」との情報も 捜査関係者は「釈放でリスクも」と懸念
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”川崎春花がついに「5週連続欠場」ツアーの広報担当「ブライトナー業務」の去就にも注目集まる「就任インタビュー撮影には不参加」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
長浜簡易裁判所。書記官はなぜ遺体を遺棄したのか
【冷凍女性死体遺棄】「怖い雰囲気で近寄りがたくて…」容疑者3人の“薄気味悪い共通点”と“生活感が残った民家”「奥さんはずっと見ていない気がする」【滋賀・大津市】
NEWSポストセブン
坂本勇人(左)を阿部慎之助監督は今後どう起用していくのか
《年俸5億円の代打要員・守備固めはいらない…》巨人・坂本勇人「不調の原因」はどこにあるのか 阿部監督に迫られる「坂本を使わない」の決断
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン