『続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)に小泉今日子(48才)とW主演し、私たちの胸を熱くした中井貴一(53才)。そんな彼が、阿部寛(50才)と組んで、正統派時代劇に挑んで話題を呼んでいる。それが、映画『柘榴坂の仇討』(9月20日公開)だ。映画主役にかけるなみなみならぬ意気込みを中井本人に聞いた。
* * *
自分でも迷惑な俳優だと思っています。撮影に入って、芝居のことを考えると、それだけになってしまうんですから(笑い)。
めしを食っていても箸が止まってしまう。ひとまず芝居のことは置いといて、今は食事に専念しようということができないんです。真夜中でも演技や台詞について、はっと思いつくと、その場で監督やプロデューサーに電話しないではいられないんですよ。
《ブルーのジャケットに純白のパンツ、赤いカフスボタンが小さなアクセント、というクールな姿で登場した彼は、その格好とは裏腹に熱く語る。》
京都にいても、なんにも楽しいことがなかった(笑い)。ただホテルと撮影所の行き来だけで。これまでの撮影だったら、撮影所を出るときは、役を置いて出るんです。撮影所の外まで役を引きずって力が入っていたらつらいですからね。でも、今回に関しては、あえて役を抜かない、ずっと役柄のままで居続けるよう仕向けたんです。だから、楽しくなくて(笑い)。
《息抜きは、京都の街をウオーキングすることだけ。オフの時間は京都御所から、鴨川のほとりから、路地から、ただ歩き回った。》
江戸から明治へ時代が変わり、近代化の一環として髷を結うことが禁じられ、洋服を着ることが奨励されても、物語の主人公・志村金吾は、時代にひとり逆らうように髷を結い、着物と袴で仇を追い続けたんです。
わかりやすくいえば、日本中のみんながスマホになったのに、ひとりだけガラケーを持ち続けているような感じ…(笑い)。変えるタイミングを逃しただけかもしれないけど、でも、「これってかっこいいんじゃないの」とどこかで思うようになっている。「まだこんな格好をしているやつがいる」と行き交う人たちにさげすまされながら、髷を結い続けている強さを彼の中に見たんです。
《映画の中で仇役となる阿部との距離感は、カメラの前を離れても、厳しく守り通した。》
現場では、挨拶程度しか言葉を交わさなかったですからね(笑い)。朝、撮影所のメイク室に入るでしょ。すると阿部さんが、よりによって隣の席でメイクを始めているんですよ。敵同士を演じていますからね、まいったな、とか思いながら最低限、「おはよう」と言うだけで、ぼくも目を閉じてメイクに入る。すると、いろんなこと考えちゃうんですよね。
もしかしたら、阿部さんはもっと話したいと思っているのかなとか、もっと話しかけたほうがいいのかな、とか。本当は仲がいいのにお互いに役を意識して、口もきかないでいるというのは、正直、疲れましたね。
※女性セブン2014年10月2日号