日本人初のグランドスラム大会決勝進出を成し遂げた錦織圭(24)。快挙に関わった企業は軒並み恩恵を受けた。スポンサー契約を結び、ウェアを提供したユニクロ(ファーストリテイリング社)では、錦織モデルのテニスウェアがほぼ完売。ユニクロブランドの世界的認知度はさらに高まった。
全米オープンを独占中継したWOWOWには、準決勝・決勝前に新規加入の申し込みが殺到。「問い合わせ件数は前年同期の約20倍に上った。同社の総加入件数は過去最高を上回ることが確実視されている。
しかしもっと早く、13歳から錦織を支えてきたのは「ソニー」だった。ソニー元副社長で日本テニス協会名誉会長の盛田正明氏が私財1億円を投じて設立した「盛田正明テニスファンド」(MMTF)の支援を受け、錦織は米国の名門IMGアカデミーに留学していた。その後もレッスン料や遠征費、現地の学校の学費など様々な形で援助を受けてきた。
「これまでに17人の留学生を送り出してきたが、審査は厳しく、プロとして活躍できるようになるまで支援を受けられたのは錦織と西岡良仁(18)の2人だけです。“世界に通用する才能を海外に送り出したい”という主旨で始まったMMTFにとって、錦織選手は象徴的な存在になっている」(テニス協会関係者)
今や錦織は、ファンドに「恩返し」する立場になった。MMTFでは、世界ランク100位に入った選手は後輩の育成費用として獲得賞金の10%をファンドに寄付する制度を設けている。MMTFの担当者がいう。
「錦織選手への支援額は公表できませんが、2008年から昨年までの5年間、獲得賞金の1割を還元していただきました。すでに返済は終了しています」
昨年の年収はスポンサー収入も合わせて11億円と推定されている。獲得賞金は1億1800万円ほどだった。今年は全米オープンの賞金だけで1億5000万円。年収は20億円超になるとの見方もある。もし今年も返済が続いていれば、かなりの高額が支払われていたかもしれない。
「盛田氏の過去のインタビューによると、留学時代にプライベートコーチをつけるなど相当な費用を使ったため、錦織選手の場合5年間の寄付でも“完済”とはいかなかった。決して今回のフィーバーでMMTFが潤ったわけではないようです。とはいえ義理堅い錦織選手ですから、今後も色々な形でMMTFをサポートしていくのではないか」(前出・テニス協会関係者)
プレー以外でも日本テニス界を牽引する男なのだ。
※週刊ポスト2014年10月3日号