9月8日、朝日新聞の人事採用担当部長から来春入社予定の内定者にこんな一斉メールが送られた。
〈ご存じのとおり、朝日新聞の慰安婦検証紙面を発端とした他紙・週刊誌報道が続き、池上彰さんコラムの不掲載問題では読者へのお詫びと説明をしたところです。皆さんに大きな不安をもたらしていることに、大変申し訳なく思っています〉
このメールは同日に発売された本誌記事と無関係ではなかったようだ。
本誌は9月8日発売号で、8月11日に兵庫県で開かれた朝日の内定者イベントの様子を報じた。
ある内定者が朝日新聞大阪本社編集局長に「慰安婦問題が話題になっていますが、それについてどうお考えですか?」と質問した。
それに対して編集局長は「私たちは正しいものは正しいと常に言い続ける必要がある」と答え、さらに人事採用担当部長が「(慰安婦問題で朝日を批判する人たちは)大体記事を読んでないんですよ。テレビ番組かなんかの批判を見ているだけで」と開き直った──という内容だ。
社長自ら謝罪した今となっては噴飯モノの回答である。内定者の間で「質問に正対しない対応にがっかりした」との声が上がったのも当然だった。
そんな「ジャーナリストの卵」たちの反発を感じ取ったからか、メールにはこんなイベントが開催される旨も添えられていた。
〈9月17日14時30分から東京本社で、「先輩記者になんでも質問会」を開きます〉
〈10月1日の内定式を迎える前に、もやもやした気持ちがあれば、同期となるみなさんや先輩たちと共有してもらえれば、と願っています〉
ある内定者がいう。
「確かに僕らは“もやもや”を抱えています。だけどそれを解決するのは内輪の質問会じゃなくて紙面だと思います」
身内の不安解消には素早い対応を見せたが、その内向きの悪癖を学生たちは見抜いているようだ。
※週刊ポスト2014年10月3日号