人気番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京系)で、見どころのひとつが旅先での食事シーン。自由奔放な蛭子能収のメニュー選びに、リーダー役の太川陽介が苦い顔をすることもしばしば。そんな時、太川は何を考えているのか。新刊『ルイルイ仕切り術』を上梓したばかりの太川が、本音を吐露した。
* * *
蛭子さんといえば、もうみなさんご存じだとは思うんですが、食の好みが極端なんですね。旅の途中で、どんなにおいしそうな郷土料理があっても、オーダーするのは決まってトンカツかカレーライス。
お店の人に地の魚がおいしいといわれても、「ボクは魚が嫌いだから」 と、平然と言い放つ。そして、「やった! トンカツがあった!」といってトンカツを注文する。トンカツだったらどこにでもあるんですけどね。そして本当においしそうにトンカツを食べる。
蛭子さんいわく、ご自身が漁師さんの息子なんで、魚は子供の頃から食べ飽きている。というのが魚嫌いの理由だそうですが、だったらトンカツだってそろそろ食べ飽きるくらい食べてるんじゃないか?と思うんですが、どうなんでしょう。
でもボクもときどき、蛭子さんのトンカツやカレーライスがうらやましく思える時があるんですよ。郷土料理やその土地の名物料理って、たまにですけど外れることがあるんです。いやけっこうあるかな、路線バスの旅は。
なにしろグルメ番組じゃないですからね。本当にいきあたりばったりで、その時に入れるお店で食事をするわけですから、それは外れることもありますよ。最近は、ディレクターも、「味の感想をいってください」っていわなくなりましたから。
でも、そんなお店でもトンカツやカレーは絶対に外れない。あと外れがないのはオムライスですね。そんな外れのない料理をほおばる蛭子さんを見ては、「いいなァ~蛭子さんのトンカツ…」って内心思いながら食べてる時もあるんです、正直に書いてしまうと。
そう考えると、蛭子さんはそれを全てわかったうえでトンカツやカレーライス、オムライスという絶対外れない料理をオーダーしているのかもしれませんね。でも、ただ“外すのが嫌”というだけで、そういう注文をしていたんじゃ、番組的にも申し訳が立たない。お店の人にも失礼。そこで、自分なりに、「ボクは魚を食べ飽きていて苦手なんで」という理由を公言している。
まぁそんなことはないとは思いますが、あのどんな時にも、もはや周りの空気をまったく無視してまでのブレない蛭子さんの姿勢というのは、失敗を回避するひとつの方法かもしれませんね。
これはもう蛭子さんからのアドバイスになってしまいますが、ブレない姿勢は失敗することがない。これも覚えておいていいんじゃないでしょうか? ただ、この周りの空気を無視してまでブレない行動を取るというのは、蛭子さん以外になかなかできる芸当ではないんですけど。
※太川陽介・著『ルイルイ仕切り術』(小学館)より