2011年3月11日に起こった東日本大震災と津波の影響によって、東京電力の福島第一原子力発電所で大規模な事故が発生した。今も避難を余儀なくされている被災者もおり、汚染水問題や電気料金値上げを巡る問題など課題は数多く残されている。
事故後から批判され続けている東京電力。社員の妻たちはどう過ごしているのだろうか。山本典子さん(40才・仮名)は3年前をこう振り返る。
「原発事故直後は、住んでいた社宅に卵を投げられ、仲がよかったママ友が露骨に私を避け出しました。別のママ友からは『電気代にコストを転化しているから、ご主人の給与が下がらなくっていいわね』と、嫌味を言われたこともあります。
給料は下がっていたけど言い返せなかった。ゴールデンウイークに旅行に行く予定があるのを知ったママ友からは『あんなことをしてよく旅行になんて行けるわね』とも言われました。そして、小学生だった子供が学校でいじめの対象に。結局、社宅を出て引っ越しました」
山本さん一家は、今も周囲に“夫は電気関係の会社”としか伝えずに生活している。田中ゆう子さん(37才・仮名)は陰湿な近所いじめにあったと告白する。
「震災以降、家の壁には近所の住民からいたずら書きされるようになりました。消していると後ろから卵が投げつけられる。そんなことの繰り返しで、諦めて相手にしないように自分に言い聞かせましたが、子供への影響を考えて引っ越しました。頑張って建てたマイホームを泣く泣く売って、予想外の費用がかかり家計が苦しいです。
夫の通勤時間も長くなりました。他の奥さんも皆同じだったと思います。子供への被害が心配で通学に付き添って行った知り合いもいました。今は少し落ち着きましたが、思い出したくない過去です」
東京電力のグループ会社に勤務する夫をもつ守口友美さん(50代・主婦)は、隣町まで買い物に行かざるを得なくなったという。
「顔なじみの個人商店に顔を出したところ、これまでは普通に愛想よく対応されていたのに、『お前なんかに売るものなんてない。帰れ!』と言われてしまった。仕方なく少し遠いけど、素性を知られる恐れがない大型スーパーまで買い物にでかけました。主人の担当は風力発電で事故とは直接関係がないので、まさか影響があると思いませんでした」
問題を起こした企業に勤める夫を持つというだけで、ある日家族に襲いかかる悲劇。非難の矛先は無関係な家族にも向けられるという現実を肝に銘じておきたい。
※女性セブン2014年10月2日号