読書の秋、勉強の秋がやってきた。実りが多い秋を約束してくれそうな、頭によい栄養豊富な食品や成分については、とくに子育て家庭で関心が高い。母親たちは、普段から子どもの頭によいものを取り入れようと気を配り、新しい情報にも敏感だ。
「子ども時代の環境は大事ですよね。スポーツ選手に子どもの頃の話を聞くと、親によい環境を与えられていることが多いでしょう? 仕事や勉強で優秀な人も同じだと聞きました。自分の子どもにはできるだけのことがしたいから、毎日のごはんづくりには何を食べさせるのがよいか気をつけています」(30代・4歳女児の母)
たとえば、0~17歳の子どもを持つ働く母親のうち71.1%が青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)が脳の発達に良いと知っている(ディー・エス・エム調べ)。そして最近では、アラキドン酸とDHAを同時に摂取することが乳児の脳の発達に深くかかわり、記憶や学習能力、言語能力を発達させると近ごろ注目を集めている。
アラキドン酸は肉や卵、魚、肝油や母乳に多く含まれており、エネルギー源になるだけでなく細胞膜をつくる栄養素だ。体のなかでは脳にもっとも多い成分でもある。また、大人はアラキドン酸を体内で合成することができるが、乳児は体内で合成できない。そのため、母乳等から摂取しなければならない。
一生のうち、脳がもっとも成長するのは乳児の時期だ。人間の脳の重さは1歳で大人の約70%、3歳で大人の約90%まで成長することがわかっている。もし、アラキドン酸を摂取する量が異なると、乳児の脳はどのような発達の違いを見せるのか。
アラキドン酸と脳の発達の関係について、興味深い試験がある。2000年にアメリカで発表されたデータによると、アラキドン酸とDHAが添加された粉ミルクを与えられると、DHAのみや無添加の粉ミルクを与えた乳幼児より精神発達指標(記憶、単純な問題の解決力、言語能力)が高く、さらに全米平均も上回った。
これらの研究成果から、アラキドン酸DHAを配合した粉ミルクは国際的にも有用性が認められ、2007年7月の国連食品規格委員会総会で配合の企画案が合意された。その後、日本のメーカーでもアラキドン酸を加えたものの販売が始まり、現在は、母乳と同じくらいの範囲の量が含まれる商品も出てきている。これらの製品は、悩み多い母親たちの手助けになっているようだ。
「子どもを産んですぐから、母乳があまり出ませんでした。私のどこが悪いのだろうかと悩んだのですが、相談した保健師さんから『いまは母乳とほとんど変わらない栄養成分が含まれた粉ミルクもあります。お母さんがリラックスしてくれることが赤ちゃんにとって一番です。無理せずミルクを使いましょう』と言ってもらえました。あまり母乳をあげられないことに罪悪感があったのですが、おかげで気が楽になりました」(20代・10か月男児の母)
体調不良など様々な事情で粉ミルクと母乳を併用する母親は多く、生後1~2か月では43.8%にのぼる(厚生労働省調べ)。もし粉ミルクを使う必要があるのなら、アラキドン酸とDHAなど栄養成分をチェックして、粉ミルクを上手に選ぶのがよさそうだ。