スーパーの特売日に見られる〈卵1パック(10個)100円〉の広告。思わず「安い!」と飛びつく人も少なくないだろう。一方で、1パック数千円もする高級卵の入荷を待ちきれない人もいる。
「贈答用だと10個8500円ですが、おかげさまで長い時で2か月待ちという状況です」
そう話すのは“日本一高い”といわれる卵「彩美卵・輝(さいびらん・かがやき)」を生産・販売する埼玉県秩父市の「アクアファーム秩父」の新井照久さん。1個850円もする卵が売れている理由とは何か?
「鶏は5年もかけて品種改良を重ね、餌や水、飼育方法も徹底的にこだわりました。その結果、生臭さがなく、濃厚なコクと甘みのある卵になったのです。高額ですから最初の1年は1つも売れなかった。でも、一度食べてもらうと普通の卵とは全てが違うことがわかってもらえ、次第に売れるようになりました」(新井さん)
卵は鶏の飼育環境や餌がダイレクトに響くため、そこをこだわれば味が変化するが、当然高額になる。
「アクアファーム秩父」では、1000坪の広大な敷地に飼育するのは2000羽のみ。その中で「輝」を産む鶏は150羽ほどで、ストレスを軽減するため放し飼いされている。ベースとなる飼料には養鶏場独自の素材を混ぜるが、3%が一般的。ここでは漢方などの厳選素材を30%も混ぜ、卵の味に深みを出す。オススメは卵本来の味がわかる「卵かけごはん」。黄身には独特の甘みがあり「プリンみたい」という人もいるという。
千葉県君津市にある「岡本養鶏場」では、中国発祥の高級鶏、烏骨鶏の卵が生産されている。同じくこだわりの飼育方法でビタミンEが通常の卵の10倍など栄養価が非常に高い。1パック2700円と高額だが、全国から注文が殺到している。卵は生産者のこだわりにより改良されているのだ。
一方、消費者のニーズに合わせて進化しているのが卵の加工食品。これまで需要があっても食中毒などの恐れから製品化が難しかった半熟卵だったが、キユーピーは、新技術により「とろ~り半熟たまご」を、キャラ弁作りに励むママのために「たまごや野菜の薄焼きシート」を販売。いずれも同社の人気商品となっている。
普段、何気なく食べている卵はこんなにも進化しているのだ。
※女性セブン2014年10月9日号