【書評】『「女子」の誕生』/米澤泉/勁草書房/本体2600円+税
【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)
「30代女子」「40代女子」「大人女子」……。成熟した年齢の女性を「女子」という言葉で形容するようになって久しい。そこには、単なる性別ではなく女性の新しい生き方や意識が込められている。本書は、ファッション誌における「女子」の誕生と変遷を辿り、女性の生き方、意識の変化を検証する。
著者によれば、ファッション誌に「女子」という言葉が広まる端緒となったのは、「28歳、一生”女の子”宣言!」というキャッチフレーズで1999年に『Sweet』が創刊されたことだという。それは、年齢にとらわれず、自分の着たい服を着ようという宣言だった。その主張はじきに、『Sweet』の読者層であるアラサーにとどまらず、下の世代はおろか、上は40代まで幅広い世代の共感を呼び、「女子」は一般化した。
本書を読むと、当初、「女子」には、おもに少女性、可愛らしさといった意味が込められていたが、やがて年齢や立場、役割(未既婚、妻、母)にとらわれない自由な生き方、男性や子供に付属する脇役ではなく、自分が主役となった生き方そのものを意味するようになったことがわかる。今や「死ぬまで女子」まで誕生しそうな勢いだ。
〈「女子」たちが好きに選ぶのはファッションだけではない。人生もまた、好きに選ぶことを彼女たちは求めているのである〉
その背景にあるのは強い自己肯定、女性であることへの肯定だ。「女子」のテンションの高さにオジサン男子は気圧されるが、その一方、〈「女子」を生きるロマンティックに、エキセントリックに〉といった、やや浮ついた言葉の羅列を見ると、「女子」の行方も少々心配になってくる……というのはオジサン男子の僻目だろうか。
※SAPIO2014年10月号