秋にも大型連休をつくろうとする政府の動きが活発だ。
例えば、来年9月は21日(月)~23日(水)が祝日となっている。平日の24日(木)、25日(金)に有給休暇が取得できれば19日(土)~27日(日)まで「9連休」も可能になる。内閣府は有識者会議をスタートさせ、秋の長期休暇を含めた「休み方改革」の議論を深めている。
政府が長期連休を促す狙いはなにか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
「表向きは観光業など地域経済の活性化などが挙げていますが、その一方ではホワイトカラーエグゼンプション導入による“批判かわし”の側面もあります。つまり、労働時間の規制を緩める代わりに、強制的に休日を増やせば社会問題化する長時間労働やサービス残業も相対的に減らすことができると考えているのでしょう」
そこで槍玉にあげられているのが、飛び石連休を埋める有給休暇というわけだ。確かに日本のサラリーマンが働き過ぎなのは有給の消化率を見れば一目瞭然だろう。
厚生労働省の調査では、企業が労働者1人に付与した年間の有給日数は最長20日のうち、平均17.9日(繰越分は含まず)あるものの、実際の取得日数はわずか8.6日と半分以下だ。
「有給は労働基準法で定められた労働者の権利で、休む理由を言わなくても堂々と取得できる制度なのですが、さすがに遊びに行く目的では休みづらいのが日本企業の特性です。しかも、『この忙しい時期に休むのか!』などと上司から睨まれたら遠慮するしかない。
そこで、最近はトヨタ自動車のように予め社員に休暇の計画を出させる『計画年休制度』を導入して有給消化率80%超をキープしていたり、大成建設や帝人のように半日、1時間単位で休みを取得できる有給制度を導入したりする企業も増えました」
だが、社員の柔軟な休み方に理解のある“ホワイト企業”は大企業のほんの一部に過ぎない。問題は人材難に喘ぐ中小企業だ。社会保険労務士の稲毛由佳氏はいう。
「中小企業の大半は社員が有給を取ることを想定して要員計画を立てているわけではないので、みなが頻繁に休めば業務が回りません。労働者側も、有給を取得できたとしても次の日以降の残業がよけいに増えるくらいなら、休まずに働いたほうが体もラクだと考える人は多いはずです」