第2次安倍改造内閣発足直後の9月9日、大企業を中心に約1600社の加盟企業を抱える日本経団連会長・榊原定征氏が自民党本部を訪れ、5年ぶりとなる「政治献金再開」を表明した。
「献金再開によって、現在約13億円(2012年)まで落ち込んでいた自民党への企業献金は最低でも年間50億円程度、中期的には2倍の100億円まで膨らむだろう」と自民党事務局幹部は笑みを隠さない。
安倍自民党はその見返りをきっちりと用意している。「法人減税」と「消費増税」である。まず、わかりやすいのが法人減税だ。
「来春にもう一度賃上げするために、政策面での後押しをしてほしい」
18日、榊原氏は都内で会談した菅義偉・官房長官にこう要請した。政権が国民に約束した賃上げをエサにして、“確実に法人減税してくれよ”とわざわざ念押ししたのである。
中小企業の多くは赤字で法人税を納めていないから、減税の恩恵を受けるのはもっぱら経団連加盟の大企業だ。献金再開は、法人減税で納めなくてよくなった税金を自民党にキックバックすることに他ならない。
国民の税金を山分けする「取引」はいまや公然の場で行なわれるようになっている。
安倍首相が消費税10%への引き上げに際しての判断基準とする「景気動向」を議題に据える経済財政諮問会議のメンバーに、政府は9月5日、榊原経団連会長と新浪剛史・サントリーホールディングス次期社長の起用を決定した。
16日、榊原氏らを交えた新陣容による経済財政諮問会議の初会合が開かれた。安倍首相や麻生太郎・財務相などが顔を揃える中、議題が経済状況の分析に入ると、榊原氏はこう発言した。
「(各種経済指標の悪化は)7~8月の異常気象による天候不順が主な原因であろうかと思う。(中略)景気の回復基調そのものは変わっていない」
バラ撒き予算のために喉から手が出るほど増税したい安倍政権が涙を流して喜ぶ“民間企業の分析”だろう。
財界は「カネとヨイショ」で都合のいい政策を買い、政権与党はそれを売る。なんという醜さか。
※週刊ポスト2014年10月10日号