長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)が9月27日噴火し、登山客ら51人が死亡した(10月5日現在)。
御嶽山のケースを細かく検証すると、噴火の約2週間前となる9月10日昼頃から火山性地震が増加し、同11日には85回発生していた。1日の発生回数が80回を超えるのは2007年に小規模な噴火が起きた時以来だったが、登山者のほとんどがそんなことは知らなかった。気象庁は情報の周知についてこう答える。
「該当地域の地方気象台からリアルタイムで各自治体に情報は伝わっていたはずです。そこから先、どのようにして登山者にまで周知されたかはわかりません。岐阜県側ではその情報を付近の一部の店などに貼り付けていたそうですが、長野県側については未確認です」(地震火山部火山課)
自治体に任せれば、登山者への警告よりも、予知が外れた場合の経済活動への悪影響を考えてしまう危険もある。だからこそ中立の立場として火山噴火予知連絡会のような機関があるのではないのか。
火山の多くは温泉地を抱え、地元経済は観光で成り立っている。
気象庁は噴火した後に警戒レベルを最低の「1」から入山規制の「3」に引き上げたが、本誌の現地取材では、事後の警報であっても、規制区域にかかるため運休している御岳ロープウェイの近くにあるホテルの経営者は、「10月は観光シーズンなのに、風評被害で予約が4割もキャンセルになった」と肩を落とした。
王滝村の商工観光係の女性は「本来ならこれからが紅葉の見頃で登山のハイシーズン。それが全部キャンセルになると影響は深刻です。長引けば12月のスキーの山開きにも影響が出てきます」と心配する。
仮に気象庁が事前に警報を出し、噴火が起きなかった場合、地元の観光産業に打撃を与えたと大きな批判を浴びるのは間違いない。だから、噴火の後にしか警報を出せず、登山者は不意打ちの噴火で生命の危険に晒されたのではないか。
情報を独占した「お上」の事なかれ主義が最悪の結末を招いてしまったという見方もできる。
※週刊ポスト2014年10月17日号