韓国・仁川で開かれていたアジア大会が10月4日に閉幕した。バドミントンの「風」問題や、ボクシング女子の不可解判定など、まぁ、想定の範囲内ではあったが、開催国による愚行が繰り返されてしまった。
9月28日のサッカー男子準々決勝の日韓戦。日本代表(U-21代表)が0-1で敗れた試合の前に、韓国サポーターが初代韓国統監・伊藤博文を暗殺した安重根の肖像画を掲げたのだ。
安重根は韓国では植民地支配に抵抗した“英雄”とされ、「反日」運動のシンボル的存在である。
差別的、政治的スローガンを禁止する国際サッカー連盟(FIFA)の規定に明白に違反する行為と考えられる。しかも、昨年7月にソウルで行なわれた東アジアカップの日韓戦でも同様の肖像画が掲げられたばかり。
アジア大会組織委員会は「正式なコメントは差し控えたい」としたものの、同委員会の関係者は「JOCから抗議の意見書が提出され、『再発を極力防ぐために努力する』と返事をしている」と、厳しい姿勢で対処することを匂わせ、その後、韓国サポーターに自制を呼びかけるなどの動きを見せている。
とはいえその努力が実るかは疑わしい。当の韓国サッカー協会は本誌の取材にこう開き直っている。
「FIFAの会員協会として政治色の排除を標榜しているが、今回の件はサポーターが個人としてやったことで、我々は指図できる立場にない。解釈は様々あり、国民的なヒーローである安重根さんの旗を作れば選手を力づけられるという考えもあるだろうし、それに反対する意見もあるだろう」
が、FIFAの懲罰規定には観客の行為にも協会の責任が及ぶことが明記されている(67条)。
FIFAスポークスマンは「AFC(アジアサッカー連盟)が責任を負うべき問題である」とした上で、「一般論としてはFIFAのスタジアム保安規定の60条(挑発的・攻撃的行為の禁止)が関係するように思える。ただ、管轄の連盟がどのような判断をするか次第だ」と玉虫色の回答に終始した(AFCは締め切りまでに回答せず)。
それをいいことに韓国メディアは「騒動は日本の言いがかり」と勢いづいている。次の日韓戦は来年1月にオーストラリアで開催されるアジアカップとなる可能性が高いが、こんな侮辱が続くのならしばらく対戦は遠慮したいところだ。
※週刊ポスト2014年10月17日号