『週刊ポスト』で9月からスタートした福島第一原発事故に関する「公開調書」検証シリーズは、大きな反響を呼び起こしている。シリーズ第1回は『菅政権「国民見殺しの3日間」』と題して福島第一原発への「海水注入」の真相と政府がメルトダウンを把握しながら隠していた疑惑を検証した。
当事者の菅直人・元首相もすぐ反応した。自身のブログで、<公開された吉田調書や政治家の調書の検証が週刊誌でも始まった。事実に即した検証であれば大歓迎だ>としてこう書いている。
<今日発売の週刊ポストでは(中略)「海水注入が始まっていた事実を知らなかった菅首相が『激怒』して『止めた』とは考えにくい。安倍氏はどこでその“事実”を掴んだのか明らかにするべきだろう。」と述べている。この点はまさにその通りだ>(9月29日付)
菅氏自身に都合のいい部分だけが切り取られている。断わっておくが、菅氏の行動を正当化するために記事を掲載したわけではない。
政府は9月11日に「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)の19人分の調書を公開した。
1000ページを超える調書は、原発事故当時に官邸や東京電力本店、福島第一原発で何が起きていたのか、国民に何が知らされ、あるいは隠されたのか――その「真実」を追うための重要な材料である。
詳細に検証すれば、菅氏の主張に沿う部分もあれば、逆に菅政権が国民に嘘をついていたという不都合な事実も出てくるだろう。
誰かの行動を正当化したり意味もなく批判したりするために検証するのではなく、事故の経緯を正確に捉え、反省して二度と悲劇を繰り返さない仕組みづくりに活かすことが重要なのだ。
※週刊ポスト2014年10月17日号