NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』が初回視聴率21.8%(関東地区)を記録。話題を呼んだ前作『花子とアン』に並ぶ数字となった。
好調なスタートを喜ぶのはNHKだけではない。『マッサン』はウイスキーの製造技術を学ぶためスコットランドに渡った主人公・亀山政春(玉山鉄二)が現地女性のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)と国際結婚し、2人で帰国するところから物語が始まる。モデルはニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝・リタ夫妻だ。酒類業界に詳しいジャーナリスト・永井隆氏が語る。
「ウイスキー国内市場は1983年をピークに縮小が続き、2008年からのハイボールブーム以降も全盛期にはほど遠い。アサヒ、サントリーのウイスキー国内大手2社では話題作の続く朝ドラで取り上げられることを拡販につなげようとする機運が高い」
ニッカウヰスキーを傘下に置くアサヒグループHDは、放送開始に合わせて「竹鶴政孝の精神を受け継ぐ商品」(同社広報)との触れ込みで新ブランド「ザ・ニッカ」を投入。ラインナップの一つである「ザ・ニッカ40年」は1945年の原酒をブレンドし、1本50万円(700本限定)ながら、「老舗のバーや年配のファンから問い合わせが相次いでいる」(同前)という。
サントリーHDも、10月1日付で就任した新浪剛史・新社長(ローソン前会長)のもと、蒸留設備増設とともにウイスキー拡販の策を打つ。
「10月21日には『サントリーウイスキーホワイト』で、85年前に創業者・鳥井信治郎が国産ウイスキー第一号として世に送り出した当時のデザインを再現し、復刻版として限定発売します」(同社広報部)
両社とも朝ドラ人気にあやかるべく「歴史」を訴求材料とした話題づくりに励んでいるようだ。
主人公のモデルとなった竹鶴は、鳥井にスカウトされてまずサントリー(当時は寿屋)に勤め、後に独立した。「飲みやすさを求めた鳥井と本場の味にこだわった竹鶴の路線対立があった。ドラマでもその相克が見せ場になるだろう」(NHK関係者)というから、今後の“創業者対決”の盛り上がりがさらにウイスキーブームの後押しとなりそうだ。
※週刊ポスト2014年10月17日号