最近60代以上の女性の間で「ボツイチ」という言葉が広がりつつあるという。漢字で書いたら“没一”で、「夫に先立たれた経験が1回ある」という意味だ。55才の時に結婚32年目の夫を脳梗塞で失った斎藤多紀子さん(57才)。
そんな斎藤さんを励まそうと、友人がハイキングに誘ってくれた。夫の死から半年がたっていた。なんと、その日に、斎藤さんは「恋に落ちた」と言う。
相手は何くれと気遣ってくれた、友人の息子で21才年下のSくん。「いくらなんでも、娘と年が変わらない子を好きになるはずがない、と思っていたのに、初めて映画を見に行った帰りには、男女の仲に。おかしな話ですが、Sくんとそうなったとたん、私の中から夫の影が消えたんですよ。いくつ年下でも男は男なんだなと、すごく納得しちゃった」
その日から、母親である友人の目を盗んで、Sくんの住むワンルームマンション通いが始まった。自宅には、Sくんと同世代の娘がいるし、夫の遺影の飾ってあるリビングで話しても、ちっとも気持ちが弾まない。
「彼の部屋を掃除して、ご飯を作って、セックスして。夫しか男を知らなかった私は、男ってこんなに違うのかって、セックスのたびに感動していました」
どこかどう違うのか。斎藤さんは含み笑いをするばかりだが、ここしばらくそのSくんとも会っていないと言う。
「若いって素晴らしいけど、出費もバカにならないんです。デート費用は全額、私が出して当たり前だし、掃除も料理もして当たり前。だんだん彼もわがままが出てきてね」
新たな恋人、6才年上の妻帯者のKさんと知り合ったのは半月前のこと。彼は2回目のデートで、1泊ひとり5万円はするホテルをとってくれた。
「この間までSくんのワンルームマンションの掃除をしていた私が、星がつかめそうな高層ホテルに泊まっている。“面白いと思わない?”と主婦をしている友達にうっかり自慢したら、言われましたよ。“夫が死んだからって、何したっていいワケじゃないのよ”と。そうなんですけどね。好きな人が心を占めていると思うと、すごく元気になれるんです」
夫の死から立ち直る時に使う杖は人それぞれ。明日を生きるために、いちばん、心踊る杖をつかむことを“生命力”というのかもしれない。
※女性セブン2014年10月16日号