御嶽山(おんたけさん)の噴火で改めて火山のリスクに注目が集まっている。被害の大きさからいって、最も警戒が必要なのが富士山である。静岡、山梨、神奈川3県による「富士山火山広域避難計画」では、火山灰は静岡、神奈川、東京、房総半島の全域に降り注ぐとされる。農業に多大な影響を与えるばかりでなく、鉄道、道路など交通網が影響を受ける。避難対象は75万人。火山灰の影響は890万人に及ぶ。
富士山に負けず劣らず噴火の影響が大きいのが一大リゾートが広がる箱根山だ。地震学者の島村英紀・武蔵野学院大学特任教授はこう指摘する。
「箱根の最後の噴火は3000年前になるが、最近、活動が非常に活発化してきた。2001年には箱根山全体の膨張が観測され、2000年代に入ってからは群発地震が明らかに増えている。昨年1~2月には1000回以上の地震活動が観測され、同2月には震度5の地震によって箱根山のロープウェイを急遽停止して点検することになった。
また大涌谷は昔から火山ガスが噴出していることで知られる観光地だが、最近はその周囲までガスの噴出が広がり、草木が枯れてきたことが確認されている」
3000年前の箱根の噴火は非常に大規模なもので、現在はゴルフ場がいくつもある仙石原の広大な地域が溶岩と火山灰で埋め尽くされ、溶岩はさらに長尾峠を越えて静岡県側まで流れ出した。現在の芦ノ湖はこの時の噴火で火砕流が川をせき止めてできたものだ。
「富士と箱根は距離にして25キロしか離れていない。富士山の活動が活発化していることと、箱根の活動が関係している可能性もある」(島村氏)
その箱根山には気象庁の地震計が1か所しか設置されていない。神奈川県立「神奈川県温泉地学研究所」が独自に10か所ほどに地震計を設置しているが、「神奈川は観光県で、中でも箱根は中核的な観光地。そのため『箱根山の噴火が危ない』といわれたくないからデータがなかなか出てこない」(同前)との指摘もある(同研究所は「データを検証して顕著な動きがあれば隠さず発表している」と回答)。
こうした迫り来る危機に対処するためには、噴火予知ムラと役所の利権にされるだけの確実性の低い「予知」はいらない。
※週刊ポスト2014年10月17日号