よく語られる「鮨の作法」は本当なのか。10月6日発売の週刊ポストのカラー16ページ鮨特集で取材した店の板前たちと、フードライターの森脇慶子氏に聞いてみた。
例えば気になる食べる順番。「個人的には淡泊なネタから食べるのが好きですが、好みの順番でOK」(森脇氏)という。板前も「どうぞ好きなものから頼んでください」と口を揃えた。
同じネタを続けて頼むのは迷惑といわれることがあるが、「自分の仕事が気に入ってもらえたということなので嬉しい」(東京・経堂の鮨店「TOSHIYA Verde」の土屋陽平氏)という声も。
知ったかぶりせず店の人とコミュニケーションを取れば失礼はない。それが一番の「作法」だろう。以下、よく聞く6つの「鮨の作法」について、その真偽を紹介しよう。
【1】順番は「淡泊な白身から」
「私はお客さんの好きなように出します。食べたいと思い浮かんだものをどんどんいってほしい」(東京・銀座「銀座 鮨 まさの」の正野篤氏)
「好きな順番で構いません。お茶とガリで口の中をリセットすればいいんですよ」(土屋氏)
【2】箸ではなく手で食べるのが通
「好みです。食べやすいほうでいいと思います」(森脇氏)
「好きなほうでOK。箸で鮨を横向きに倒し、ネタとシャリを箸で挟んでネタに醤油をつけるのが箸で食べる作法です」(神奈川・小田原「あじわい回転寿司 禅」の西尾明氏)
【3】握りは一口で食べなければならない
「私の場合、一口で食べられない時はかじりかけを醤油皿に戻さずにすぐに食べるようにします」(森脇氏)
「一口で食べることを想定して握っているのでできれば一口でお願いしたいところです。どうしても食べられない時は半分に切ってお出ししています」(東京・銀座「鮨處 やまだ」の山田裕介氏)
【4】好きなネタばかり注文するのは迷惑
「小さなお店だと予約分プラス3~4人分程度しか仕入れていないので困るかもしれません。予約の時点でたくさん食べたいネタを伝えたほうがいいと思います」(山田氏)
「私自身、ウニ10貫などと注文してしまいます(笑い)」(土屋氏)
【5】長居をしてはいけない
「つまみが多い店はお酒を飲みながら楽しむところなのである程度は大丈夫でしょう。握りが中心の店では食べ終わったらサッと出るのがスマート」(森脇氏)
「他のお客さんに迷惑がかからなければ良いと思います。逆に帰りたいお客さんを私が引き留めてしまうことも(笑い)」(山田氏)
【6】事前に予算を伝えるのは無粋
「当日に予算をいわれても対応できない場合も。事前に伝えていただければ仕入れを工夫することができます」(東京・渋谷「鮨 あい澤」の相澤博久氏)
「お金の心配をせず鮨を存分に味わうためにも、事前に予算を伝えていただくのはむしろ歓迎です」(正野氏)
※週刊ポスト2014年10月17日号