総理大臣や外国の要人などをとりまく黒いスーツ姿の警護官たち。するどいまなざしを周囲に向け、颯爽とした身のこなしで任務にあたる彼らはSP(セキュリティポリス)と呼ばれる警視庁の精鋭たちだ。女性が1割に満たない職場で、いざとなれば命を投げ打つ覚悟が必要な厳しい仕事──そこで働く女性の素顔に迫った。
女性SPは男性に準ずる形でスーツを着用する。スーツは数年に一度支給されるが、それだけでは足りないため各自が自腹でセミオーダーで作る。市販のスーツはウエストを絞ってあったり、丈が短かったりするので、ジャケットの下に拳銃や無線機など警護に必要な装備をつけるSPには不向き。先輩に紹介してもらった紳士服の仕立屋などで、丈を長めに、内ポケットを多めにしたスーツを作る。警視庁警備部警護課所属の警察官、つまりSPの石井美幸さん(41才)はこう話す。
「夏用、冬用合わせ、全部で15着くらい持っています。警護中だけでなく、激しく動く訓練中に破れることが多いので、高価なものではなく、1着2万~3万円のものを作業着感覚で買っています。色はダークな黒。グレーだと雨に濡れて色が変わるので着ません」
髪は肩にかかるくらい。仕事のときに邪魔にならないように伸ばさない。ネイルはしない。人によっては、警護する要人や場所に応じてネクタイの柄を変えたり、シャツの色を変えたりする人もいる。
「とにかくこの仕事は警護する要人に失礼のないようにすることが大事。SPは四六時中、要人の周囲にいるため、それは要人にとってもストレスです。ストレスを少しでも軽減し、万全に警護することが大切です」(石井さん)
警護対象者との信頼関係があってこそ務まる仕事なのだ。
※女性セブン2014年10月23・30日号