中国で習近平氏が国家主席就任直後から腐敗撲滅キャンペーンを展開したことで、共産党政府の腐敗幹部が次々と取り調べを受け失脚、軍幹部もその例外ではなかった。ジャーナリストの相馬勝氏が解説する。
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党・政府・企業幹部はおろか一般市民の不満やストレスは溜まるばかり。このようななか、突如として行なわれたのが中国進出日系企業などの「外資叩き」だった。
中国では8月、デンソーや矢崎総業など日系自動車部品メーカー12社が独禁法の適用を受け、そのうち10社が過去最大規模の制裁金支払いを命じられた。これ以外の2社は「調査に協力的だった」として制裁金の支払いを免れた。
外資を対象にした独禁法認定の事例はサムスン電子など韓国や台湾の液晶メーカー6社のほか、フォルクスワーゲンなど欧米の自動車メーカーなど昨年から目立っており、さらに7月下旬には米マイクロソフト中国法人の複数の事務所が中国当局による抜き打ち検査を受けており、「まるで外資を目の仇にしている」との声が上がっていた。
こうした「外資叩き」によって中国を見限る企業が続出している。
ロイター通信によると、米化粧品大手のロレアルが撤退したほか、ジェネリック医薬品メーカーの米アクタビスも中国事業の1つを売却した。米グーグルは検閲をめぐって中国政府と対立し、2010年に撤退を表明。マイクロソフトも取り調べを受けている。
日系企業も2012年夏の激しい反日暴動で、中国からの撤退を視野に入れ、東南アジアに生産拠点を移す「チャイナ・プラス・ワン」戦略が浸透しつつある。これは今年上半期の日本からの対中直接投資が前年同期比48.8%減の24億ドル(約2520億円)に激減したことからも明らかだ。
中国当局による「外資叩き」の懸念について、李克強首相は9月9日、天津市で行なわれた国内外の企業経営者らと対話の場で、「外国企業は調査対象の10%にすぎず、決して外国企業を狙っているわけではない」と明確に否定したものの、外資の不安は収まっていない。
※SAPIO2014年11月号