9月以降、例年より気温が低めの日が増えたこともあり、早くも「鍋つゆ」の売れ行きが好調だ。大手スーパーでは常設の棚に加え、野菜や肉の売り場などあらゆる場所に鍋つゆの特設コーナーができている。
市場調査会社の富士経済によると、鍋に入れるだけで味付けができる簡単つゆの市場は年々伸び続け、2013年は330億円規模まで膨らんでいる。
<2008年以降は景気低迷による節約志向や内食化が加速する中で、カレー鍋やコラーゲン鍋、トマト鍋といった洋風系つゆのヒット商品が生まれて市場を大きく押し上げ、鍋メニューの多様化や手軽さが喫食頻度の向上を後押ししていった>(富士経済の分析)
そして、鍋つゆブームに新たな革命を起こしたのが、固形タイプやポーションで小分けにした鍋つゆだ。
「味の素が2012年に発売した『鍋キューブ』は個食化の流れにも乗って初年度の売り上げが20億円を超えるヒット商品になった。翌年にはエバラ食品工業が『プチッと鍋』を発売してこちらも販売は堅調。鍋つゆの主役は瓶からPET容器、そしてパウチへと代わっている」(トレンド誌記者)
確かに核家族化や単身世帯の増加で、大容量・使い切りの鍋つゆはニーズに合わなくなった側面はあるだろう。しかし、小分けの鍋つゆがヒットしている背景には、違う要素もある。
フードアナリスト(日本フードアナリスト協会所属)の重盛高雄氏がいう。
「自宅で頻繁に一人鍋を食べる人は、飽きないように味のバリエーションを変えたり自分好みに味をアレンジしたいと考えています。残った野菜を使って晩ご飯だけでなく朝食に鍋を食べる女性やシニア層も増えましたしね。そういう点でも少量から種類を選べるパウチの鍋つゆが選ばれているのです」
PET容器の鍋つゆの中でも、<鶏がら塩>から<担々>味などに変化する『味チェンジ鍋つゆ』(キッコーマン)や、シメの雑炊やラーメンの味わいまで追求した『〆まで美味しいシリーズ』(ミツカン)の好評ぶりを見ると、鍋に対する嗜好の多様化は明らかだ。