『ドラえもん』『パーマン』『オバケのQ太郎(新)』『エスパー魔美』など、故・藤本弘(藤子・F・不二雄)氏の作品のアニメ化を数多く手がけてきたのが、シンエイ動画だ。同社の元会長・楠部三吉郎氏は、『21エモン』と藤本氏の思い出について、著書『「ドラえもん」への感謝状』(小学館)の中で、こう振り返っている。
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『21エモン』というマンガは、1968年から1969年にかけて『週刊少年サンデー』(小学館)に連載されていた作品で、未来のトウキョウを舞台にしています。主人公は、閑古鳥の鳴くホテル「つづれ屋」の跡取り息子21エモン。このホテルに、さまざまな星から異星人が宿泊にやってくるというSFギャグマンガです。藤本先生の名作のひとつです。
私はこの作品をどうしても映画にしたいと思いました。悔しかったのです。ドラえもんのテレビアニメが始まった翌年、スター・ウォーズシリーズの公開2作目『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(エピソード5)が上映されました。これを観てね、「これは21エモンじゃないか!」と思ったんです。前作の公開1作目『スター・ウォーズ』(エピソード4 新たなる希望)も見直し、確信しました。
『スター・ウォーズ』に登場する金色の人型ロボットC-3POとR2-D2のコンビ。あれなんてまさに、『21エモン』のゴンスケ(ボーイとして働く元イモ掘り用ロボット)とオナベ(おせっかいなメイドロボット)のコンビじゃないですか。
そして、『スター・ウォーズ』でキーとなる場所は、モス・アイズリーの古びた酒場(チャルマンのカンティーナ)です。宇宙港を兼ねているこの場所には、さまざまな星の人間が集まってきます。主人公ルーク・スカイウォーカーと宇宙船パイロットのハン・ソロが最初に出会った場所としても有名です。これってそのまま、異星人たちが集うホテル「つづれ屋」そのものじゃないですか!
血相を変えて、先生のところに行きました。
「先生、スター・ウォーズが21エモンを真似してます! こんなこと、私は許せません。先生、スター・ウォーズの本家本元は21エモンなんだってことを、映画で証明しましょうよ」
先生、やっぱり表情を変えない。ニコニコ笑ってひと言。
「では、楠部くんに任せます」
私は関係者の間を駆けずり回って、なんとか1981年の夏に封切ることができました。『21エモン』はその後、シンエイ動画によってテレビアニメにもなります(1991年5月~1992年3月/テレビ朝日系)。
実際、真似したのかどうか、その辺はわかりません。私の思い込みかもしれない。本人に確認したわけじゃありませんから。でも私は、『スター・ウォーズ』よりも前に、日本にはこんな素晴らしいSF作品があるんだということを、皆に訴えたかったのです。藤子・F・不二雄先生はすごいんだぞ、と。ただ、いまになって思い出してみると、熱くなっていたのは、私ひとりなのですが……。
※楠部三吉郎・著/『「ドラえもん」への感謝状』より