中国では10月1日から1週間の国慶節(建国記念日)の大型連休で、習近平国家主席が昨年末にお忍びで訪れた肉まんのチェーン店「慶豊包子舗」に中国各地から観光客が殺到し、肉まん1200万個が売れ、売上高は1200万元(約21億1200万円)にも達した。
また、習氏の妻、彭麗媛さんが上海を訪問した際、食事をしたレストランでは「ファーストレディ・セット」が販売され大評判になったという。習氏は海外では「強面」「保守派」「強硬」などとの印象が強く、あまり人気はないが、国内では腐敗一掃キャンペーンで、高級幹部を次々と失脚に追い込んでおり、庶民には人気があることが証明された形だ。
慶豊包子舗の創業は1948年で肉まんを中心とした中華料理店としては老舗の部類に入る。その後、チェーン展開を進め現在、庶民的な料理で単価が安いこともあって、北京を中心に店舗数は210店を数えている。
同店が一気に有名になったのは昨年末、習氏がお昼に北京の月壇店を訪れ、肉まん6個とレバーの炒め物、野菜料理がセットになった21元(約370円)のメニューを注文し、自から代金を払い、店内で他の客と一緒に食事をしたことからだ。これが新聞などで大きく報じられると、客が殺到し、店側は習氏が食べて定食を「主席定食」と名付けて大々的に売り出した。
これが評判になって、今度の大型連休でも大繁盛。同店の肉まんは、3個で3元。安いこともあって、飛ぶように売れたというわけだ。
北京が主席定食ならば、上海では「ファーストレディ・セット」が売り出された。「ひょうたんケーキ」や「ミニちまき」など小さいわりには手が込んでいる上海伝統のお菓子が4つ入って38元(約670円)と少し割高だが、1日限定100セットということもあって、開店5時間前の朝6時ごろから並ぶ客もいたほどだという。
ここに割って入ったのが習氏を意識する李克強首相。李氏は今年4月、海南省海口市で開催した会議の合間を見て、コンビニに立ち寄り、夫人への土産を物色。海南島原産のココナッツを使ったココナッツチップとココナッツミルク、クリスプロールを各1箱ずつ計19元(約330円)で購入。
これを中国中央テレビ局が放送したことから、やはり大評判となった。店側は李首相が購入した3店をまとめて、「総理セット」として売り出すと、やはり大変な人気となり、いまや海南島を訪れる観光客の大半が総理セットをお土産として購入するまでになった。
中国では最高指導者やその家族の動向に敏感で、良きにつけ悪しきにつけ、指導者の行動を真似る傾向が強い。今回の習夫妻や李氏らの行動はパフォーマンスと片付けるのは簡単だが、庶民に対してはそれなりの効果があったのは間違いない。