第1週の平均視聴率21.3%(関東地区)と好発進のNHK朝の連続テレビ小説『マッサン』。初の外国人ヒロインに注目が集まったが、蓋を開けてみると話題をさらったのは、「ピン子の嫁いびり」だった。
第1話(9月29日放送)では、スコットランド人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)を連れて生まれ故郷に帰省した主人公・亀山政春(玉山鉄二)の前に政春の母・早苗(泉ピン子)が立ちはだかった。「オカアサン、エリーデス」とハグするエリーを「何するんじゃあ」と引き剥がし、氷のような表情で見下しながら「外国人の嫁は絶対認めまへん!」と言い放った。
第2話(30日放送)でも嫁いびりが炸裂。食卓にエリーの膳だけ準備せず、「後で女中らと一緒に食べてもらいんさい」と無表情でグサッ。極めつきはその後。政春に「お前がこの人と別れとうないなら、お妾さんになってもらい」とニンマリ笑みを浮かべて助言したのだ。「あんな顔、姑にされたら殴りかかってやる!」(30代主婦)と、お茶の間は一気にエリーの味方となった。
「ピン子の姑」は狡猾さも備えている。10月4日放送回では「あの子のことを思うなら、どうぞ国へ帰ってつかわさい。お願いします」と号泣しながら土下座した。これに心揺さぶられたエリーは帰国を決意して亀山家を後に。しかし、慌てた政春にエリーの行方を聞かれると、早苗は仏前で木魚をポクポク叩きながらボケッと知らんぷり。
この怪演に「怖すぎる」「さすが」「朝から気が滅入る」など、飛び交う話題はピン子のことばかり。ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で嫁姑のドロドロを20年以上演じ続けた貫禄を見せつけた。
『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版刊)の著者で、ライターの田幸和歌子氏がいう。
「初の外国人ヒロインには、視聴者がシンパシーを感じられないという不安がありました。ところが嫁姑問題でピン子さんがヒール(悪役)を演じたことで、一気に女性視聴者がエリーに共感した。NHKとピン子さんの“戦略勝ち”ですね」
当のピン子は雑誌のインタビューで「今後の見せ場は私が死ぬシーン」と堂々の“主役宣言”。ヒロインのエリー、この“鬼姑”を存在感で上回れるか。
※週刊ポスト2014年10月24日号