御嶽山の噴火は、多くの犠牲者を出した。だからこそ、国策として噴火予知に莫大なカネをつぎ込みながら「予知できるフリ」をして国民を騙し続けてきた役所と、その諮問機関である火山噴火予知連絡会を中心とした「噴火予知ムラ」の責任は重い。
どの火山が噴火するかを、ピンポイントで日付まで予知することは限りなく不可能に近い。まずは自然災害には科学によって予知しきれない部分があることが広く理解されなくてはならない。
その上で、公開データを丹念に拾い集め、さらに歴史に学ぶことで、ピンポイントで噴火のタイミングはわからないまでも、その危険な予兆を掴もうとするアプローチにはもっと注目すべきだ。
立命館大学歴史都市防災研究所教授の高橋学氏は、気象庁が公開する今年1~9月の約1500回に及ぶ震度1以上の地震のデータを集計・分析した。その結果、今回の御嶽山の噴火には前兆となる動きが存在したと指摘する。
「震源の深さが10キロに満たない『浅い地震』のデータを集計しました。すると御嶽山では今年に入ってからだけで15回も揺れが観測されています。震源のごく浅い地震は、地表面に近いマグマや水蒸気が動いていることを示している可能性が高く、火山の動きが活発化していることが読み取れます。
気象庁が一部しか公開していない微弱な揺れの回数は、震度1以上の地震の100~1000倍あると考えられ、より顕著に増加傾向が読み取れるはずですが、大きめの揺れの頻度からも兆候が読み取れることは、今回の御嶽のケースでもよくわかります」
御嶽山では噴火の約2週間前の9月11日には微弱な揺れが80回以上観測されていた。しかしその情報は防災に活かされなかった。役所の警告だけに頼っていても身の安全は守れない。
※週刊ポスト2014年10月24日号