同じきょうだいでも、性格が全く違うことはよくある。本来、遺伝によってある程度似るはずのきょうだいの性格がこれほどまでに異なってしまうのはなぜなのか。そこには、きょうだいが「似ない」要因がある。それは「非共有環境」と呼ばれるものだ。
「非共有環境とはそれぞれが独自に経験する環境です。例えば、学校の友達や担任の先生はきょうだいそれぞれ違う。家庭にも非共有環境はあります。兄にとっては『弟がいる』。弟にとっては『兄がいる』。こうした環境の差が、きょうだいの似ていない部分をつくっていくわけです」
そう語るのは安田女子大学心理学部准教授の平石界さん。第一子か中間子か、末っ子か。たしかに生まれた順番によって、家庭のなかで置かれる状況は大きく変わる。
国際基督教大学教養学部教授の磯崎三喜年さんは、非共有環境のなかでも、特にきょうだいの性格の違いに大きな影響を与えるのは、親の子供に対するかかわりかただと話す。
「例えば、第一子の場合、親は初心者として子供に向き合います。胎児の頃から注目され、さらに祖父母からも注目されて、期待を一身に背負って育てられるのが第一子です。親も緊張しているので、その緊張感も伝わる。ですから第一子は大人とのかかわりに対して敏感になり、責任感が強く、几帳面で慎重な性格になりやすい」(磯崎さん)
2人目以降は、親も出産・子育てに慣れてくるので、子供に向けられる緊張感はやわらぎ、期待も上の子供と分散する。さらに、中間子か末っ子かでは、置かれた立場の差から性格にこんな違いが生まれてくるという。
「上にも下にもきょうだいがいる中間子は、板挟みの状態のなかで自分はどうすべきかを常に考えている。ですから、きょうだい以外の対人関係でも、人当たりがよく、空気を読むタイプになりやすい。あるテレビ番組で実験したら、お菓子を置いておくと、中間子を集めたグループだけが、ちゃんとみんなで分けあって食べていました」(磯崎さん)
ちなみにひとりっ子だけを3人集めたグループでは、お菓子が2つしかないのに、先に2人が食べてしまった。末っ子、たとえば第三子になると、親はますます子育てに慣れる。下の子だけにかまっているわけにもいかないので、子育てはどうしても緩くなる。
「その影響で、末っ子はのびのびしていたり、型にはまらなかったりすることが多い。上のきょうだいにうまく頼るので、要領がいい子に育ちます」(磯崎さん)
対照的に、ひとりっ子の場合は、親はその子ひとりの子育てに集中する。
「愛情から教育資金まで、親の“投資”をすべて受けられ、かまってもらえるので、自信を持った子に育つ傾向がある。実際に、中学生から大学生まで1176人を対象に『自分が得意なこと』について私がアンケート調査をしたところ、その自己評定は、きょうだいのいる子よりも高い傾向があります。マイペースのように見えて、芯が強く、ここぞというところで強さを発揮します」(磯崎さん)
※女性セブン2014年10月23・30日号