チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は自身が中国に帰還するための秘密交渉を中国当局と進めていることが分かった。米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」が報じた。ダライ・ラマのチベット亡命政権は中国政府とこれまでも交渉を続けてきたが、2009年1月の第9回交渉以来、正式な協議は途絶えている。ダライ・ラマが中国に帰還すれば、1956年以来、58年ぶりで中国の土を踏むことになる。
ダライ・ラマはこれまでも「中国山西省の仏教の聖地である五台山を訪問したい」とたびたび述べていたが、9月中旬、具体的に五台山巡礼の可能性に言及。ダライ・ラマの特使が中国当局と東南アジアで頻繁に接触し、中国訪問の日程など具体的な計画を話し合っていることを明らかにした。
また、10月2日には一部メディアに対して、「事態は変化している。(帰国の確率は)かなり高い」と楽観的な見通しを示していた。ダライ・ラマは五台山訪問後、そのまま中国に滞在することを希望しているという。
これに対して、中国チベット自治区の呉英傑・同自治区党委副書記は英紙「タイムズ」との会見で、「中国共産党とダライ・ラマ側代表との対話は順調に進んでいる」と語り、中国共産党指導部はダライ・ラマの中国訪問を許可する可能性があることを明らかにしている。
呉氏は「中国の国家指導者がダライ・ラマと会談し、ダライ・ラマの中国帰還が認められることも考えられる」と発言。ただし、その場合は「チベットが中国の一部であると認め、独立活動をやめることが条件になるだろう」と指摘している。
ダライ・ラマは9月18日、ちょうどインドを訪問していた習近平氏について、「前任者(胡錦濤・前主席)よりも実務的でオープンだ」と述べている。
習氏の父親で、副首相や党政治局員だった習仲勲氏はダライ・ラマと個人的に親密な関係を構築しており、ダライ・ラマが習仲勲氏に時計を贈ったエピソードはよく知られている。