同じ時期に同じ家庭で育ったのに、なぜか性格は違うきょうだい。安田女子大学心理学部准教授の平石界さんは、進化心理学(生物の進化の理論を用いて人間の心や行動を理解していこうとする学問)の観点から、生まれた順番による性格の違いをこう解説する。
「第一子は家の中でポジションが確保できているため、その地位を守ろうと保守的になる。第二子以降は家族のなかで自分の居場所を獲得する必要があるので、上と違うことをやろうと革新的になるという見解があります。下の子は、親から時間、お金、愛情をもらうためには上の子と同じことをしてもダメだから、違うことをしよう、というわけです」
その結果、性格だけでなく、得意分野にも違いが生まれてくる。国際基督教大学教養学部教授の磯崎三喜年さんが説明する。
「第一子には自分がアクティブにリードしようとする傾向があり、とくに女性は能力が高い。英・エセックス大学社会経済研究所の研究者が今年発表した研究によると、イギリスの家庭5000以上にアンケート調査を行った結果、第一子の女性が社会的地位の高い仕事で活躍しやすいというデータが得られました」
一方、末っ子はスポーツの分野で大成することが多い。例えばサッカーの日本代表でも、いちばん多いのは末っ子なのだ。そして、中間子は「調整能力」に長けており、政治や経済の分野での活躍が目立つ。
「戦後の歴代内閣総理大臣は中間子がいちばん多い。企業家でも、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(65才)やソフトバンクの孫正義社長(57才)が中間子です」(磯崎さん)
子供の能力をより伸ばしていくためには、生まれ順による特性を知っておくことが大切だと磯崎さんは話す。
「他の人から見ればきょうだいは似ていると思いますが、2007年に小学生から大学生まで411人を対象に私がアンケート調査を行ったところ、本人たちは意外と『自分ときょうだいは似ていない』と思っていることがデータに表れました。きょうだいにとって必要なのは『差異化』。例えば姉妹でピアノを習っていて、クラシックでは姉のほうがうまかったけど、やがて妹がジャズピアノを始めて、お互い認め合えるようになる。同じものだと序列がついてしまいますが、違えばお互いの持ち味が出るわけです。こうした『きょうだい型』を親や教師にも知ってもらいたいですね」
きょうだい関係をよくするためにも、「違い」を認め合うことが大切なようだ。
※女性セブン2014年10月23・30日号