作家の落合信彦氏は、この8月、イタリア、フランス、オーストリアに2週間ほど滞在した。そこで、ヨーロッパの危機的な状況に直面したという。
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はっきり言おう。いまのヨーロッパは完璧に劣化しており、EUは確実に崩壊に向かっている。
フランスでは、消費税だけで20%も取られ、マスコミ関係の会社をやっている私の友人などは、所得税などで収入のうち75%も税金で取られているという。こんな国で、人々がまともに働こうと思うわけがない。
フランスに限らず、ヨーロッパ全体で、高負担・高福祉の国が増えている。かつてイギリスでは高福祉の弊害で国民の勤労意欲が低下する「英国病」が蔓延し、サッチャーの改革がそれをぶっ壊した。ところが、いまはヨーロッパ全体がこの「英国病」にかかり、無職の人間が政府におんぶにだっこという現象が各国で起きている。
それだけではない。同じことが国家間でも起きているのだ。ギリシャやキプロスといった経済破綻した国々が、ドイツやフランスといった、稼いでいる国々にたかる。ドイツ人やフランス人が払った税金が、EUからの補助金としてギリシャやキプロスに流れている。
そのせいで、ギリシャやキプロスの人たちは働こうとせず、ドイツやフランスでは、EUに対する強烈な不満が高まっている。
イタリアのローマでも不満が渦巻いていた。イタリア人もそう熱心に働く方ではないが、ギリシャやキプロスに対しては「とんでもない」と口を揃える。「なぜ後進国のせいで、われわれ先進国が割を食わなければならないのか」というのが彼らの本音なのだ。
私は今回訪れた3か国で、数十人にEUをどう思うかと尋ねたが、誰一人としてEUを評価する者はいなかった。
EUのベルギー本部にいる官僚たちは、選挙による信任も国民の了解も得ないまま、こうしたEU内の富の再分配を勝手に行なっている。いまヨーロッパ各国で巻き起こる「反EU」の声の高まりは、その結果なのだ。
※SAPIO2014年11月号