女優で著書『人生の終いじたく』(青春出版社刊)のヒットでも知られる中村メイコさん(80才)は「片付けは大人の教養」だと断言する。
「自分でもなかなかできない片付けを、子供や孫、友人に始末させたら大変迷惑です。体が動いているうちに少しずつ自分のことを片付けていって死んでいくのが大人としてのエチケット。以前夫(作曲家の神津善行さん)が、『せいぜい思い出の写真は子供止まりだよ。腕を組んだ爺さんと婆さんの写真がたくさん残っていても、嫌になるし捨てるのも大変。若い人にそんな手間をかけさせるんじゃない』と言ったのですが、まさにその通りだと思います」
そんな中村さんは、最近になって自宅を処分した。30年間暮らした一戸建てを手放し、広さ3分の1のマンションに引っ越したのだ。
「2年前に本を出した頃から身の回りの品を徐々に片付けていたにもかかわらず、引っ越し時はトラック7台分のモノを捨てました。2才半で女優になった以降の台本、スチールといった資料、紅白で着た振袖や夫のグランドピアノも処分しました。私の資料だけでトラック1台分はあったでしょう。私はもともとモノに未練がなく捨てるタイプでしたが、古い映画のポスターやブロマイドなどは事務所のスタッフが資料として自宅の一室に保管していたんですね。でも今回、『美空ひばりさんと違って中村メイコの歴史なんてたいしたことないから』と伝えて全部捨てました(笑い)」
クローゼットの服も引っ越しとともに思い切って処分した。
「50~60枚の着物を人に差し上げて、残った100枚は全て捨てました。何百万、何十万円で仕立てたものですが、着物はリサイクルに出すと価値がほとんどないんです。何十万円で買った着物に3000円の値をつけられて嫌な気分になるくらいなら、捨てたほうがスッキリします」
捨てすぎて困ることはないのだろうか。中村さんは「捨てたことで、やっと気づいたことがある」と言う。
「広い家に住んでいるとついモノが多くなっちゃうけど、スペースがなければ最小限の物しか身の回りに置かない。それで充分なんです。いまはちょっと長い旅行に来ている気分で、欲しいものがあればその都度無理をしない範囲で買えばいいと思っています。便利な世の中ですから、なくなったら買えばいいんです」
※女性セブン2014年10月23・30日号