今年の年末で丸2年を迎える安倍晋三政権。流通業界の決算をみても消費が低迷しているのは明らかだが、経済政策「アベノミクス」の効果を安倍首相は強調している。しかし、アベノミクスが本当に有効な政策なのか疑問であると大前研一氏は今後を予測している。
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このまま丸2年が経過してアベノミクスのメッキが剥がれ、経済成長率の目標が達成できないことが露呈したら、どうなるか? 日本国債が暴落し、ハイパーインフレになる可能性が非常に高い。消費税率10%への引き上げを見送ればなおさらだ(増税して景気が低迷すれば過去20年の低迷がそのまま続くだけで、そのほうがダメージは少ない)。
ハイパーインフレを避けるためには、1000兆円を超えた国の借金を返すメドをつけなければならない。その方法は、(1)戦争を起こす、(2)ギリシャのように国の歳出を4割削減する、(3)消費税を20%にする、のいずれかだ。それらがすべて無理なら、ハイパーインフレにならざるを得ない。
ハイパーインフレになれば、モノやサービスの価値が上がってカネの価値が下がるから、国の借金は消えていく。カネの価値が10分の1になれば借金も10分の1、100分の1になれば100分の1になるわけだ。そしてそれは国がやらなくても、市場による国債暴落という形で現実になる。
そんな暗いシナリオは現実的ではないという反論もあるだろうが、これは決して悲観論ではない。今、日本人が考えるべきは、まず現状の厳しさを正しく認識し、その原因を共有して対策を自分たちの頭で考えることである。アベノミクスのような浮わついた楽観論で対処できる問題ではない。
※週刊ポスト2014年10月31日号