わたしたちと同じように、愛犬にも必ず老いは訪れる。食事や排泄の世話が必要になったり、一晩中吠え続けたり、その時、飼い主には大きな負担がのしかかる。家族の一員であるワンちゃんと最期まで一緒に暮らしたい。でも──そんな飼い主たちの悩みに応える施設「老犬ホーム」が今、急増している。
今、老犬ホームが注目を集めているのは、愛犬の「老後」が飼い主にとって大きな問題になっているからだ。ペットフード協会の調査(2013年)によると、国内の飼育犬の平均寿命は、2010年に13.9才だったのが、2013年には、14.2才に延びているという。
犬が衰えながらも長生きする間に、自らが健康を損うなどして世話ができなくなった飼い主が、老犬ホームを利用している。
飼い主が先に亡くなり、遺族が犬を預けるケースもある。健康に問題はないが、仕事や家庭の都合などで充分にケアできない飼い主の利用もある。核家族化が進み、犬を引き継ぐ子や孫が身近にいないことも背景にあるのだろう。
さらに、社会がペットの命を尊重する方向に動いていることも、老犬ホームのニーズを高めている。
かつては、世話が大変だからと、飼い主が老犬を保健所に引き渡すケースもあったが、2年前の動物愛護管理法の改正により、保健所はそうした引き取りを拒めるようになった。昨年9月に改正された「動物の愛護に関する法律」では、飼い主が最期までペットの面倒を見る責任が明記された。
環境省によると、「譲受飼養」(飼い主から動物を譲り受けて、その飼養を行うこと)の登録業者は、昨年4月時点で全国20業者。これらが老犬(猫)ホームに当たる。
ただ、ペットホテルやペットシッターなどが該当する「保管」業者にも、老犬ホームの機能を有するところはあり、実際には20をゆうに超える業者が存在しているとみられる。
広々とした高原に立つ施設があれば、都会の住宅地に作られたものも。動物病院やドッグランを併設しているところもある。食事や散歩の内容は、犬の状態をみて決めているところが多い。
料金も千差万別だ。ひと月数万円というホームがある一方で、終生世話をする契約を結んで、一括して100万円以上を支払う施設も。入所金が数十万円かかるところもある。
ただ、すべてがホームの裁量ではない。施設や管理方法については、環境省が定める基準をクリアしていなければならない。主な項目は以下の通りだ。
●清潔を保つ
●日常の動作をするのに充分な広さを確保する
●運動時間を取る
●必要に応じて獣医師に診療を受けさせる
「老犬ホーム」に愛犬を預けることは必ずしも無責任なことではない。自分や家族にとって、また愛犬にとっても大きなひとつの選択肢となりうる施設なのだ。
※女性セブン2014年11月6日号