世界でも屈指の高級ホテルである米ニューヨークのウォルドーフ・アストリア・ニューヨークが中国の安邦保険グループに売却されることが発表されたが、同集団は太子党(高級幹部子弟)グループが関わっていることが分かった。同ホテルは、米国はもちろん海外要人が多数宿泊することで知られており、電話の盗聴などで国家機密が中国側に筒抜けになる可能性があるとして、米当局はいまから神経を尖らせているという。
安邦保険グループは2004年に資本金5億元(約88億円)で創立されたが、わずか10年間で推定資産が6000億元(約1兆6000億円)と飛躍的に成長し、いまでは生命保険規模は世界8位と大きく躍進した。これは中国政府がかなり肩入れしたものと受け止められている。
香港紙「リンゴ日報」によると、同社の会長はかつての中国の最高実力者、トウ小平氏の孫の夫、呉暁輝氏であり、大株主には新中国建国の元勲で、外相も務めた陳毅・元帥の息子が名を連ねているなど、習近平・国家主席が中心の太子党グループが深く関わっている。
同グループはウォルドーフ・アストリアを19.5億ドル(約2130億円)で買収、今後も欧米を中心にグローバルな資産配分を勧めていく方針だ。
ウォルドーフ・アストリアといえば、副首相だったトウ小平氏や喬冠華・外相が訪米し、キッシンジャー米国務長官と米中国交樹立交渉を行なった場所であり、トウ氏の孫の婿である呉氏が経営する会社が買収するのは奇妙な因縁といえる。
また呉氏は温家宝・前首相の息子、温雲松氏と香港で資産投資会社を共同で創設し、中国政府部門からインサイダー的な情報の提供を受けて大もうけしたとの疑惑も浮上している。
このため、今回のホテル買収も中国政府の思惑が強く働いているとの見方も出ている。ウォルドーフ・アストリアはマンハッタン中心部に位置しており、ニューヨークを訪れる各国の要人や国家元首クラスが宿泊するホテルとしても知られている。また、毎年9月の国連総会の際は数百人の米外交団が利用するなど、米政府との関係が深く、今年の国連総会に出席した安倍晋三首相も宿泊したほど。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」などによると、ホテルが習近平国家主席に近い太子党グループに売却されたことで、米政府のセキュリティ部門は中国側に室内の会話を盗聴される恐れがあると警戒しており、すでに要人宿泊用のホテルとして、新たなホテルを探し始めているという。