飼い主に代わって老いた愛犬の世話をしてくる「老犬ホーム」が今、急増している。料金は千差万別で、ひと月数万円というホームがある一方で、終生世話をする契約を結んで、一括して100万円以上を支払う施設も。入所金が数十万円かかるところもあるという。
地代が高く住居が密集する東京23区で老犬介護施設を探すのは難しい。そんな中、板橋区で「都市型老犬ホーム」を謳うのが、3年前にオープンした「老犬本舗」だ。 「介護が必要な犬にとっては移動も負担になる。ここは高速道路の出入口に近いので負担を軽減でき、利用者も面会に来やすい。利用者の99%は関東にお住まいのかたです」
代表の川口美恵さんはこう語る。
訪れた日は短期預かりの犬が1匹、長期預かりの犬が9匹滞在していたが、ほとんどの犬がスヤスヤと眠っていた。ここでは提携する獣医師が1日おきに回診し治療も施設でするのが基本だ。病院との連携のよさは、「老犬だから仕方がない」で済まされた経験のある飼い主にとっては心強い。
利用方法はまずは電話でカウンセリングを予約する。 「飼い主に『引き取ってほしい』というニュアンスを感じれば、お断りしています。私たちはあくまで飼い主のかたと一緒にお世話をするというスタンス。毎日会いに来たいという飼い主様は大歓迎です」(川口さん)
施設は自由に見学できるので、スタッフがどんな世話をしているかすべて見ることができる。店舗でカウンセリングを受け、利用希望者が納得できれば契約を書面で交わす。老犬本舗では本契約の前に、1泊でも2泊でも「お試し」することも可能だ。千葉県在住の野田恵子さん(63才)は今年6月、初めて愛犬ランちゃん(16才)を2泊で預けた。
「7月に半月ほど家を空けることになり、その前にとりあえず試してみました。犬はモノを言えませんが、帰って来た様子で、きちんと薬をのませてくれたり、お尻をきれいに拭いてくれたり、充分なケアをしてくれたかどうかはひと目でわかります」
川口さんは言う。
「老犬ホームを利用することは罪だと思い込んでいる飼い主が多い。でも、介護の仕方を知っている私たちのところへ来ていただければ、食事や水の摂り方や、歩行の介助の仕方やオムツのアドバイスなどもできる。介護疲れから愛犬を安楽死させるしかない、と思い詰める前に、こうした施設があることをぜひ知ってほしいです」
※女性セブン2014年11月6日号