夫は60才で定年退職し、老後は貯金と年金で悠々自適な生活を送る――ほんの十数年前までは当たり前だったそんな風景も今は昔。年金が減らされ、消費税は増税されて経済的に苦しくなっている。加えて定年夫と四六時中、家で顔を合わせることが大きなストレスになっている今、積極的に「共働き」というセカンドライフを選択するシニアが急増している。
総務省の労働力調査によると、今年4~6月の共働きシニア(65才以上の夫婦)は前年同期比11.7%増の95万世帯となり、過去最高を記録した。東京都に住むMさん(主婦・69才)は少し前までは東海地方に住んでいた。同居していた息子夫婦と別居するためにマンション管理人になった。
「建設会社で働いていた5才年上の夫は、定年退職後シルバー人材センターの紹介でアルバイトとして働き、月に数万円稼いでいました。当時はまだ現役の看護師だった私が大黒柱でしたが、その私も5年前に退職。夫と同じシルバー人材センターに登録して、自治体主催の健診の手伝いをしながらのんびり暮らしていました」
このままふたりで老後を過ごすのだろうと思っていたとき、予想外の出来事が起きた。40才だった長男がリストラされてマイホームを手離してUターン。Mさん夫婦は長男一家4人と同居することになったのだ。
「狭い家に6人が同居することになって逃げ場がなくなり、家の中の雰囲気が悪くなりました。嫁には気を使うし、孫の世話を押し付けられてストレスがたまる。でも、派遣社員になった息子とパートの嫁の稼ぎじゃこの先独立は無理だし…。どうしようかと悩んでいたところ、知人から東京で住み込みのマンション管理人の仕事を紹介されたんです」(Mさん)
Mさんは夫と相談し、自宅を息子一家に譲って東京に出ることを決めた.
「今の月収は夫婦で35万円。家賃はタダだし、仕事はマンションの共有スペースの掃除と宅配便を預かるくらい。6~21時までは必ずどちらかが窓口にいないとダメですが、夜間は警備会社にバトンタッチ。2週間前までに申請すれば休日ももらえます。暇な時間も多いのでガーデニングを始めました。
敷地内の空いているスペースで家庭菜園をやり、収穫した野菜のおすそ分けをしてマンション住民に喜ばれています。戻るところもないので、ここで死ぬまで夫と働きながら暮らすしかないと思っています」(Mさん)
※女性セブン2014年11月6日号