【書評】『一瞬で「本音」を聞き出す技術』/井上公造/ダイヤモンド社/1512円
【評者】伊藤和弘(フリーライター)
人に話を聞くのは難しい。ライターの私は日常的にインタビューを行っているが、「完璧だった」と満足できたことなど一度もない。極端に口の重い人もいれば、思わぬところで地雷を踏んでしまうこともある。
インタビューや交渉といった仕事に限らず、知人友人との会話で悩んでいる人も多いだろう。特に「建前」や「お世辞」を美徳とする日本人は、なかなか「本音」を打ち明けない。たとえ知りたくなかった本音でも、知れば相手の考えを変える対策も打てるはずだ。
いかに本音を見抜き、相手との距離を縮めるか―本書には、著者が28年にわたる芸能リポーター生活で培った貴重なノウハウが惜しみなく公開されている。例えば、「異性に対する質問」。男性の上司にプレゼントを贈りたいと思っているOLがいるとする。何が欲しいか直接聞いても、照れや遠慮もあって正直な希望はなかなか言わないもの。しかし、「40代くらいの男性って何をもらうと嬉しいんでしょうね?」と他人事のように聞けば、「そうだな、ぼくなら…」と気軽に本音を明かしてくれるだろう。
ほかにも、「失敗談で親近感を持たせる」「ほめ言葉の後に具体的な言葉がつくかで本音かお世辞かわかる」「相手の心を開くには、まず自分の心を開くこと」「自分に無関心な相手に好意を持ってもらうには第三者を利用する」などなど、紹介されているテクニックはどれも簡単で実用的。さらに、「宮根誠司は極度の人見知り」といった芸能界の楽屋裏も興味深く、読み物としても楽しめる。
※女性セブン2014年11月6日号