10月21日のテレビ報道に首を傾げた人も多いのではないか。
「山下智久さん捜査書類送付、歌手仲間2人といたところ通行人男性と口論に」──FNNニュース(フジテレビ系)
6月に山下智久(29)が路上で口論となり、その模様を撮影した女性の携帯を持ち去ったとして器物損壊の疑いで21日に書類送付となった──との内容だった。しかし、事件ニュースを見慣れた人であれば「書類送付」という聞き慣れない言葉に違和感を覚えたはずだ。
「警察が検察に事件書類を送付した」という意味で、通常の報道では「書類送検」である。
「山下は起訴されない見通しだという。『送検』では犯罪者の印象を与えかねないので『送付』になったのでしょう」(テレビ局記者)
もちろん送検は司法手続きに過ぎず、起訴されるとは限らない。それを決めるのはマスコミでも警察でもなく検察官で、その先にある刑事裁判で犯罪者かどうかを決めるのは裁判官だ。
確認した限りでは、過去に大メディアが「書類送付」を用いた被疑者は、「毎日新聞社長による名誉毀損容疑」「サッポロビール社長の傷害容疑」「氷川きよしによる暴行容疑」「叶姉妹の実妹の横領容疑」くらいのもの。
「大マスコミのお仲間」「大スポンサー」「芸能人」は特別なのか。フジテレビにこのヘンテコな用語の意味を訊くと、「事案によってこういう表現を使うこともあります」(広報部)との説明だった。
“書類送付”の翌日、主演映画の舞台挨拶に登場した山下は事件について謝罪した。大メディアの気持ち悪い気遣いは決して彼のためになるとは思えない。
※週刊ポスト2014年11月7日号