隣国でまたも痛ましい「人災」が起きた。10月17日、韓国・ソウル郊外の野外ライブ会場で地下駐車場の換気口のふたが崩落。上に乗っていた観客が約15m下に転落し、16人が死亡した。在韓ジャーナリスト・藤原修平氏が語る。
「当日は主催者側が当局に『配置する』と説明していた安全要員がいなかったことが明らかになっており、事情聴取を受けた担当者が自殺する騒ぎとなった。また、警察は換気口の施工業者の工事に欠陥がなかったかも捜査を進めている」
安全対策の不備や手抜き工事など、「策を講じていれば防げた悲劇」は同国では数え切れないほどある。
約300人の犠牲者を出した4月のセウォル号沈没事故では、過積載などの法令違反に加えて船長・船員が乗客を見捨てて真っ先に逃げ出していた。
その半月後には信号装置の異常見逃しによるソウルの地下鉄の列車追突事故で約240人が負傷。今年2月にはリゾート施設で体育館の屋根が崩落し、10人が犠牲となった。
「1990年代には、漢江にかかる橋の崩落やソウルにあるデパートが営業中に崩壊するといった大事故が相次ぎ、500人以上の死者が出たこともあった。
その頃から安全管理の強化がしきりに叫ばれてきたが、なかなか改まらない。天災への備えも足りず、豪雨のたびに地下鉄や道路が浸水し、2012年7月の集中豪雨では建設中の堤防が流失した」(同前)
基礎的な技術力の欠如とともに、「手抜きが当たり前」との意識が垣間見える。
※週刊ポスト2014年11月7日号