20年以上にわたり皇室取材を続けた元カメラマンの瓜生浩氏が、間近で見た昭和天皇の素顔について述懐する。
1983年5月、埼玉県行田市の博物館でガラスケースに展示された稲荷山古墳出土の金錯銘鉄剣(国宝)をご覧になったときのこと。
ケース越しにカメラマンが撮影すると、昭和天皇はムッとした表情をされたという。
「陛下がフラッシュをもろに受けるかたちになったので、眩しかったのでしょうね。そのときは手を横にふる仕草をされた。この仕草はカメラマンなら皆知っている、陛下お決まりのアクションです」(瓜生氏)
群馬県に行幸した際は、珍しい植物を観察するために周囲の草花が刈り取られていたことがご不満だった。
「そのときは説明者がいくら話しても、終始憮然とした表情でいらっしゃった。周囲の草花だって同じ植物だから、ということでしょうね。そうしたお人柄に私は魅力を感じました」(瓜生氏)
※SAPIO2014年11月号