西川きよし、マキタスポーツ、TKO木下隆行、サンドウィッチマン富澤たけし、バカリズム…これらすべて、10月からのドラマに出ている芸人の名前である。
きよし師匠は『マッサン』(NHK)、マキタスポーツとTKO木下は『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)、サンド富澤は日曜劇場『ごめんね青春!』(TBS系)、バカリズムは自ら脚本を務める『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)に喫茶店のマスター役として出演している。同じフジのドラマでは、ハライチ澤部佑が月9初の時代劇『信長協奏曲』(フジテレビ系)に出演。こちらはいきなり初回で討ち死にする役だったが…。
最近のNHKの連続テレビ小説では『花子とアン』にカンニング竹山隆範、『ごちそうさん』にネプチューン原田泰造、『あまちゃん』にワンポイントだがオアシズ大久保佳代子、『梅ちゃん先生』にたんぽぽ白鳥久美子などお笑い芸人が相次いで起用されている。
まさに「1作品に1芸人」といった感があるドラマ界。ここまでお笑い芸人の登板が増えているのはなぜだろう。
「まず、芸人の演技力が上がっていることが挙げられます。起用されるのがコント芸人に多いのが何よりの証拠です」(業界関係者)
雨上がり決死隊・宮迫博之やアンジャッシュ児嶋一哉、来年の朝ドラ『まれ』に出るドランクドラゴン塚地武雅もコント出身だ。バナナマン設楽統も『MR.BRAIN』『流星の絆』(ともにTBS系)などで演技力が評価された。コントでさまざまな役柄を演じ分けてきた場数が功を奏していると言えよう。
さらに人気の芸人を使うことで、テレビ局にとっては、ドラマを見ない層の開拓をできる効果もあるという。
「先日、劇団ひとりが来年の大河ドラマ『花燃ゆ』の出演が決まったときも、主演の井上真央についてではなく、そちらのほうがニュースとしてより多く取りあげられていた。意外な役柄に抜擢することで、ニュースバリューが出てきます」(同)
ただ、ドラマと芸人との良い相性は今に始まったことではない、とも。
「そもそも昔からコメディ映画や舞台などで笑いを届ける、いわば喜劇役者がいました。渥美清、東MAXの父・東八郎、伊東四朗もその部類です。ただ、現在のようにバラエティー番組を主戦場に活躍する芸人がドラマに出て以後の流れを作ったのは明石家さんまからではないでしょうか」(同)
それ以前にも堺正章が『時間ですよ』(TBS系)、漫才ブームのさなかのビートたけしが『刑事ヨロシク』(TBS系)といった作品に出ていたが、これらはいずれもコメディーだった。さんまは1986年、トレンディドラマの礎となる『男女7人夏物語』(TBS系)に挑戦し、俳優として評価された。これが芸人のドラマへの門戸を開いた端緒ではないかと関係者は語る。
ドラマの中ではときにほかの役者以上の存在感を見せることもあるお笑い芸人。今後もドラマのお笑い枠は大いに注目だ。