中国人民解放軍の瀋陽軍区は10月下旬に2万人の兵力を動員した大規模軍事演習を実施した。中国軍がこれほどの兵力を演習に投入するのは今年初めて。演習開始の10月25日は中国軍が朝鮮戦争(1950~1953年)に参戦した64周年記念日で、今回の演習目的は「朝鮮半島有事に備えるため」とされており、このところ中朝関係が悪化していることから、本当の狙いは「北朝鮮威嚇」との指摘もある。
中国軍機関紙「解放軍報」によると、今回の演習の主力部隊は朝鮮戦争に参戦した第39集団軍と瀋陽軍区傘下の空軍が主力部隊だが、歩兵や砲兵、戦車部隊、陸軍航空隊、化学防御部隊、サイバー部隊など十数種類の兵科と、解放軍はもちろん武装警察部隊や民兵、予備役の部隊なども動員された総合訓練となった。
中国軍は今年に入り、各軍区で「連合行動2014」と名付けた大規模合同軍事演習を計7回行ってきたが、今回の軍事演習の規模が最も大きいという。
中国国営の新華社通信は、今回の軍事演習について「作戦能力を強化するため、以前から計画していた」と伝えている。
だが、これほどの大軍を演習に投入するほど米韓両軍が軍事力をアップしているかというと、そのような明らかな兆候はないだけに、「今回の軍事演習はきわめて不可解」と中朝関係に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は指摘する。
中国最高指導部は北朝鮮の金正恩第一書記が最高指導者に就任した直後の2011年2月、「朝鮮革命の継承問題が輝くように解決された」などと金氏支持の姿勢を明確にしていたが、金指導部が中国の意向に逆らって、3度目の核実験を行ない、長距離ミサイルを発射するなど、対中軽視姿勢を鮮明にしたことで、今年に入って北朝鮮に原油を供給しないなど両国関係はぎくしゃくしている。
また、中朝両国は今年10月6日で国交樹立65周年の記念日を迎えたが、北朝鮮の公式メディアは北朝鮮指導部が中国側に祝電を送ったことを報じておらず、このところ両国間の人事交流も途切れていることから、「軍事演習が北朝鮮を仮想敵にしたものであると考えれば、極めて納得がいく」と前出の相馬氏は分析している。
これを裏付けるように、韓国紙「朝鮮日報」は「不安定な北朝鮮情勢を考慮すると、朝鮮半島情勢の急変に備えた訓練である可能性があるという見方も出ている」と報じて、今回の軍事演習は金正恩指導部の暴発に備えるための演習との見方を否定していない。