プロ野球の2014年日本シリーズは、パ・リーグの福岡ソフトバンクホークスがセ・リーグの阪神タイガースに4勝1敗で勝利し、3年ぶり6回目の日本一の座についた。両者が日本シリーズで相まみえたのは、それぞれがホームだけで勝利した、「内弁慶シリーズ」の2003年以来だ。
当時の阪神ファンは18年ぶりのリーグ優勝の余韻冷めやらぬ中、ダイエー(当時)相手に観客席でダミ声を武器に戦っていた。
「オラ~借金返せ! 身売り球団!」
「オ~イ、閉店間際の大セールはまだか~」
選手相手にも容赦ない。
「松中(信彦)~、お前大豊(泰昭。かつて阪神所属)の顔真似すなや~」
「(井口資仁に対して)顔が濃いんじゃコラァ」
さらにルーキーだった和田毅への声援に対しては、
「名前間違えとるぞ~、野球で和田いうたら豊やろ~」
メチャクチャな“口撃”を展開していたのである。
しかしこの年、阪神は敗北。今年はそのリベンジとあって、さぞ磨きのかかったヤジが繰り広げられるだろう……と思いきや、甲子園は意外にも静かだった。
最も厳しいヤジが飛ぶであろうと予測されたのは、第1戦のソフトバンクの先発・スタンリッジだった。昨季まで阪神にいた選手が敵として甲子園に戻ってきた形だったが、「スタンは悪くないねん。悪いのはフロントや」(70代の男性ファン)とかなり寛容だった。
※週刊ポスト2014年11月14日号