中国共産党の人事部門である党中央組織部と中国教育省(日本の文部科学省に相当)が連名で今年7月下旬、党高級幹部や国有企業幹部に対し、MBA(経営学修士)、EMBA(企業幹部向けのMBA)などの高学歴取得を実質的に禁止する通達を出したが、中国の名門大学である清華大学や北京大学の社会人向けMBA課程などは例年と変わりなく、入学申し込みが殺到していることが分かった。
国営新華社通信は「習近平主席の指示を無視するものだ」との批判記事を配信、党機関紙「人民日報」が掲載するなど、党内外で大きな問題になっている。
中国では例年、有名大学のMBAやEMBA課程の大学院生の15%から20%が党や国有企業の幹部で、MBAなどの学歴があれば、出世しやすいとのメリットがある。実際、習近平国家主席は福建省幹部時代に母校の清華大学の大学院に進み法学の博士課程を修了。李克強首相も中国共産主義青年団幹部時代に、やはり母校の北京大学で経済学の博士号を取得している。
だが、2012年の習近平指導部発足後、浪費撲滅キャンペーンや腐敗一掃キャンペーンで、「公費を使っての高学歴取得は浪費に通じる」とか、「大学院に学んだ企業幹部と党幹部が癒着し腐敗問題が発生する」などとの批判が続出。これが党や政府による「高学歴取得禁止令」の背景にある。
これを受けて、一時は9月の新学期に会わせて、北京の各大学院の社会人コースで退学ラッシュが起きているとの報道もあったが、フタを開けてみれば、辞退者が出ているのは、あまり人気がない2、3流大学で、北京大学や清華大学という有名校では以前に増して応募者が殺到し、入学試験の倍率が上がっているという。
新華社電によると、広東省深セン市にある清華大学深セン校のMBA課程は1年半のコースで約7万元(約124万円)の学費がかかるにもかかわらず、すでに定員の30人を超えたという。これについて、同大の担当者は「申し込みは例年と代わらず、希望者が殺到している。禁止令の影響はまったくない」とコメントしている。
また、北京大学のビジネススクールは年間の学費が約20万元(約354万円)と清華大学と比べて割高だが、定員はすでに埋まっているという。北京大のMBAの場合、実際に大学院に通学するのは1年半のうち30日と、社会人が通いやすいのも魅力になっている。
MBAに幹部を送り込んでいる北京の党機関職員は新華社通信記者に「すでに、MBA予算を組んでいるので、これを消化しないと、来年度の予算が請求できない」との裏事情を明かしている。