日本では人手不足が深刻化しているが、そうした現状と、退職後のサラリーマンの趣味がマッチしたアルバイトとしては、高齢者の趣味として定着した家庭菜園が注目される。
埼玉県上尾市の農業生産法人「ナガホリ」では60~79歳の高齢男女146人がパート従業員として農作業を行なう。ここでは後継者不足で耕作放棄地となった農地を無償で開墾し、開墾後に賃料を払って、枝豆や小松菜など農作物を栽培する。その収穫作業の担い手の中心となっているのがシニアだ。機械製作メーカーを約10年前に退職した山口佐一さん(71)が語る。
「定年後は市民農園を借りて家庭菜園を楽しんでいましたが、肥料代など結構お金がかかりました。どうせなら収入を得る形で農業に関わろうと思ったんです」
仕事は午前5時から9時まで。収穫する作物ごとに季節の移ろいを肌で感じられることが魅力だという。
「自分で栽培や収穫した作物が市場に届き、皆さんに喜んでもらえるのは嬉しい。定年後は人付き合いも減りますが、ここでは仲間と賑やかに働けるし、絶えず手足を動かしているので老化予防にもうってつけです」(山口さん)
時給は785~870円。出勤日や稼働時間は原則的に希望選択制となっている。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2014年11月14日号