10月10日、政府の社会保障制度改革推進会議で清家篤議長は、現在65歳の受給開始年齢について「引き上げることもあり得る」と発言した。その理由は「十分な年金額を確保するため」だという。
明らかに矛盾する発言である。「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏がいう。
「政府は2019年に行なわれる次回の財政検証(※注)までに、受給開始年齢を67~68歳あるいは一気に70歳へと引き上げることを狙っています。そうなれば月々の受給額が“確保”されても、トータルでは国民は大損することになります」
【※注】財政検証/5年に1度、年金財政を点検し、将来の受給水準の見通しを発表するもの。
実現すれば、段階的に受給開始年齢が引き上げられることになるだろう。過去の例から見て現在50歳以下の世代からが「70歳受給開始」になる可能性が高い。ちょうど国民年金保険料を65歳まで払わなければいけない世代と重なってくる。
それによってたとえ受給月額が8000円増えたとしても、70歳まで1円ももらえないなら損する額のほうが大きい。
では、70歳受給開始で総受給額がいくら減るのか。たとえば、現在50歳の平均的サラリーマン(平均月給45万円)であれば、なんと「1197万円」も減額されることになる。
※週刊ポスト2014年11月14日号