遅々として進まない北朝鮮による拉致被害者の奪還に向けた交渉。なぜここまで解決が遅れているのか。作家の落合信彦氏は、政治家、そしてマスコミの姿勢が歴史的にお人好し過ぎたといった観点から警告する。
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与太者国家に、日本だけが延々と騙されている。
1990年に社会党の田辺誠らと訪朝した当時の自民党副総裁・金丸信は、目の前で繰り広げられたマスゲームに感動し、さらに金日成の前で涙を流して日本の過去を謝罪した。しかもこの頃、朝日新聞をはじめとする日本メディアは、北朝鮮を礼賛するような報道を続け、金丸の「土下座外交」についてもほとんど批判しようとしなかった。
こんなばかげたことは、日本でしかあり得ない。2000年に訪朝したアメリカのオルブライト元国務長官は、金丸同様、眼前で繰り広げられたマスゲームを賞賛したところ、ワシントンポストをはじめとする全米中のメディアから「10万人の奴隷ショーを賞賛するとは何事か」と痛烈な批判を浴びた。
これが政治とメディアの健全な距離感である。日本が騙されるのは、幼稚で未熟な政治家と、幼稚で未熟なメディアが、仲良く一体化していることに原因がある。
北がウソをついて「報告ができない」と言ったことに日本の政治家やマスコミが怒ったが、これには呆れてしまった。北がウソを言うことを想定もしていなかったのだろうか。その後は「説明を聞きたければ平壌に来い」との要求を聞き入れた。本来は日本が聞き流せば済む話だ。北が欲するのはカネだけだと知らないのだろうか。
※SAPIO2014年12月号