連日のように危険ドラッグが原因とみられる事件や事故が報道されている。なぜ、危険だとわかっていても、彼らはやめられないのか。それは、パートナーがいるかいないかに関わらず、使用したうえでの性行為をやめられなくなっているからだと『脱法ドラッグの罠』(イーストプレス)の著者、森鷹久さんは断言する。
「数十人の危険ドラッグ使用者に取材していますが、全員が危険ドラッグを使用した性行為をしており、それがやめられなくなっていました。パートナーがいない人でも、使用した上でネットのアダルトサイトを見て楽しんでいました。そういう目的で危険ドラッグを使い始め、依存が強くなると性行為とは関係なく買ったらすぐ使いたくなり、移動の車の中でハーブをすって事故を起こしているのです」
危険ドラッグを始めたきっかけは一時の快楽のためだったはずなのに、最近ではそんな生易しいものではなくなり、快楽とはほど遠い感覚しか得られない。「ハートショット」や「green made Legend」といった最新の危険ドラッグは、使用が原因で死亡したとみられる事件が何件も確認され、警察も成分の鑑定をすすめながら警戒していると報じられている。
「危険ドラッグは、今では快楽を味わうために使うことすらできない、とにかく危険なものになってしまいました。新興ドラッグとして『合法ハーブ』『脱法ハーブ』などと呼ばれるものが日本へ入ってきたのが2007年ごろ。その後、法規制をすり抜けるために変化するうちに、約2年前は第5世代だったものが現在では第16、17世代まで進化したといわれています。
他の薬物の使用経験がある人も取材していますが、危険ドラッグは依存度が著しく高いという印象が以前からあります。また、最新の危険ドラッグは前触れなく突然、落ちるように気を失うのも特徴です。製造業者は以前より効きが悪いものはつくらないので、今後もますます危ないものになっていくでしょう。今でも使用するだけで即死するかもしれないのに、これからますます得体がしれない危険物になっていくと思います」(前出・森さん)
最近では、危険ドラッグを使用して交通事故を起こした人物が全身を不自然に震わせながら奇声を発する様子が報道されるなど、その恐ろしさを知る人も増えた。ところが、いったん危険ドラッグの使用を始めて依存した人は、なかなかやめない。新しいものであれば法律に違反しないで手軽に買えること、価格が安いことが、やめるきっかけを奪ってもいるという。
「危険ドラッグは大麻の3倍安くてお得なんです。最新のものは法律で禁じられていないから、気軽に変えます。条例が制定されても、関係がない都道府県にお店を置いて通信販売で売るんです。今はお金がないから大麻ではなく危険ドラッグを買ったという人もいましたし、十代の子どもが何人かでお金を出し合って回しのみしている様子も見ました。
いまだに規制はザル状態です。こんな状態では、犠牲者が増えるばかりです。危険ドラッグは使うだけで即死するような危ないものだと、警察や行政も本気で知らせるべきです」(前出・森さん)
貧困ビジネス化の側面もある危険ドラッグのまん延は、日本社会の変化を正直に映しているといえそうだ。