日本語のルーツは未だ多くの謎に包まれている。それを突きとめる旅は、言語学者たちにとって一つのロマンでもある。文明史家の原田実氏がその一端を紹介する。
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「日本民族の言語は、世界文明人種中の最も旧きものにして而も其現在までも活けるものたり、日本民族の太古史は実に世界の太古史たり、中心史たり」「日本民族は実に希臘羅典人種にして、吾国の言語、歴史、宗教社会組織等皆く全其系統に属せるなり」
これは明治・大正期に活躍した哲学者・木村鷹太郎(1870~1931)の主著『世界的研究に基づける日本太古史』上巻(1911)の序文からの引用である。木村は日本最初の『プラトーン全集』完訳者だが、その翻訳の最中に古代ギリシャの言語・習俗・神話などに日本と共通のものが多いことに気づき、日本民族こそギリシャ・ローマ文明の直系の後継者であるとの着想を得た。その考え方に基づけば日本語は当然、ギリシャ語・ラテン語(ローマ帝国の公用語)の流れを汲む言語ということになる。
木村の研究は結局、学界からとりあわれることはなくその没後は一部の好事家にもてはやされるだけに終わった感があった。ところが今世紀、日本語ラテン語起源説は新たな論客を得て甦ることになった。2006年、証券会社アドバイザーの与謝野達氏は『ラテン語と日本語の語源的関係』という620頁もの大部の書籍を著し、約900もの日本語の単語についてその語源がラテン語にあることを「考証」したのである。
日本語ラテン語起源説 ※与謝野達説による
洗う アッラウォ(洗う)
漕ぐ コゴ(前進させる)
ぐるぐる ギュロ(回る)
上げる アッゲロ(積み上げる)
下げる スッゲロ(下に持っていく)
※SAPIO2014年12月号